ヒロアカ
□ごっこ遊び(ver.出)
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うっかり一緒に眠ってしまった僕は、先に目を覚ましていた貴方に肩を揺すり起こされた。
何だか酷く身体がだるくて熱っぽいような気がしたが、気のせいだろうと瞼を擦りながら時間を確認すると、もう夜の七時になっていた。
急いで家へ帰らなければ、母親が心配してしまう。
というか、うっかりかっちゃん家に電話でもされたら後が怖い。
「……あ!すみません。僕一緒に寝ちゃって」
「それは別に構わないけどっていうか、私の方こそごめんね!呼び出しといて寝ちゃって」
「いえ。最近、忙しそうだったので……八木さんに会えただけで僕は嬉しかったので……」
「あー……うん、そうだね」
「……身体、大丈夫ですか?顔色は良くなったみたいですけど……」
「ん?うん。グッスリ寝ちゃったからね、寝る前に比べたら全然元気だぜ!HAHAHA」
「良かったぁ……」
貴方は僕の頭を撫でながら、繋いだままになっていた掌に力を込めると、僕を引き寄せ抱きしめてくれた。
少し体勢がきつかったけど、全身で感じる温もりと、聞こえる心音が嬉しくて心地良かった。
「あ!そうだ。写真!!」
「写真?」
「はい。僕と一緒に撮って貰っても良いですか?グラントリノに言われたんです。八木さんに会ったら、ツーショット写真を写メしろって」
「あれ?写メって、グラントリノ携帯電話持ってたっけ?」
「はい。最初は持ってなかったんですけど、研修の合間に買ったんです!その方が連絡を取りやすいからって」
「えぇー、私聞いてないなぁー……まぁいいや。じゃ私が撮るから、携帯電話貸して」
「はい。どうぞ!お願いします」
貴方は僕を抱えたまま、器用に片手で携帯電話を操作すると、パシャリと一枚の写真を撮ってくれた。
体格差があるので、かなり密着した構図になってしまったので、これをグラントリノに送るのは少し恥ずかしかったが、ツーショット写真よりも恥ずかしい話しを研修中にしているので、今更だろう。
「ありがとうございました!帰ったら直ぐにグラントリノに送りますね!」
「あ、できたら私にも送ってくれるかな?少女と二人で撮ったの初めてだからさ、私も持ってたいから」
「え!?あ、はい!分かりました」
「うん。それじゃあ待ってるから……気をつけて帰りなさいね」
「はい。遅くまでお邪魔してしまってすみませんでした。また学校で」
「……(ジッー)」
「八木さん?」
「ねぇ、緑谷少女。本当に送って行かなくて平気?おじさん送って行きたいんだけど……」
「八木さんはおじさんじゃありません!ってばもう〜!!後、ちゃんと一人で帰れますから大丈夫です!」
貴方の申し出はとても嬉しかったし、どうせ送ってもらうのならば、僕も貴方が良い。
だけど貴方と居るところを母親やかっちゃんに見られたら、絶対大騒ぎになってしまう。轟親子と違って、何も説明できないので。
僕は残念な気持ちを隠して、笑って貴方の部屋を後にした。
どこか寂しげな貴方に後ろ髪を引かれながら……。