ヒロアカ

□ごっこ遊び(ver.オル)
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■ごっこ遊び(ver.オル)-001



たまたま買い物に出た先で敵に遭遇したある日。
私は一人の少女と出会った。
まだ幼い、どこにでも居るような少女だ。

わたしが少女と出会った時。少女は屁泥のようなスライム状の敵に襲われ、その身体を乗っ取られようとしていた。

ヒーローとしての活動時間の残りが少なかったが、ヒーローを名乗っているのに、見て見ぬふりをする事なんてできなかったから、私は少女を助けた。

少女は私のファンだと言った。
大きな緑色の目をキラキラと輝かせ、好意に頬を真っ赤に染め上げて……。

だからほんの少し言葉を交わし、頭を撫でてやった。
癖が強く、緑がかった黒髪は見た目の印象よりも柔らかく、指に絡む感触が少し擽ったかった。

すると感激した少女は泣き出した。
嬉しい嬉しい夢みたいだと言って。

私と少女の出会いは、それで終わるはずの出会いだった。

だけど、どこか思いつめた目をしていた少女は、私を放してはくれなかった。

その場を立ち去ろうと飛躍した私の足にしがみ付き、少女は聞きたい事があるのだと言った。

付いて来てしまった少女を無理に引き離し振り落とすこともできず、困った私は人気のない路地裏で話しを聞くことにした。正直、活動時間の限界が迫っていて、ヒーローとしての姿を保つには無理があったのだが……あまりにも少女が必死だったので、絆されてしまった。

少女は個性が無くてもヒーローになれるのかと聞いてきた。

驚くべき事に、少女の世代には珍しく、少女は個性を持っていなかった。いまや生まれながらに殆どの人間が持っている個性という特異能力を。

ヒーローとは、個性の中でも特に強い個性の持ち主が、同じように強い個性の持ち主である敵と戦う職業だ。いくらなりたいという気持ちが強くとも、それだけでは無理なのだ。

だから私は少女には悪いと思ったが、きっぱりと無理だと断言した。

ヒーローとは憧れだけでなれるほど楽な職業ではないのだと、本来の姿を晒し、醜い過去の傷跡を見せる事で、私は少女を諭した。

ヒーロー時とは全く違う姿の私に少女は驚き、見せられた傷跡に言葉を詰まらせた。

そして悲鳴を上げないように、咄嗟に手で自らの口を塞いだ少女の目からは、私に会えたと感激していた時よりもたくさんの涙が溢れ出した。

少女の夢を砕いて泣かせて何がヒーローだと、心の中で自嘲したが、無理なものは無理と諭してやるのもヒーローの……大人の役目なのだ。

進路に悩んでいたという少女は、これで無謀な夢を見ずに平坦な人生を歩んで行くだろう。そう思って、力無く遠ざかる小さな背中を見送った。

だが、それから一時間と経たずに、私と少女は再会した。

私が活動時間にばかり気を取られていたがために取り逃がしてしまった、あの屁泥のような敵に、少女は一人立ち向かっていた。

敵が少女の次に取り付いた相手は、少女の知り合いで、爆発の個性を持つ少年だった。

少年の個性が強過ぎて、駆け付けたプロヒーロー達は誰も手出しできずに手をこまねいていた。

そこにヒーローが居るのに、そこに助けを求める人が居るのに、誰もどうすることもできない状況で、個性を持たない少女だけが、少年を助けようと贖っていた。

自分へと駆けてくる少女に、少年は怒鳴る。来るなと。これくらいどうってことはないと、強がってみせた。

だけど少年の顔は苦しさと恐怖から大きく歪んでいた。助けを求める顔をしていた。

だから少女は駆けた。少年の元へ。少年を救うために。

その姿に、私はヒーローに取って何が一番大切かを思い出させられた。
自分の保身のために、目の前で救いを求める人を見て見ぬふりをしようとしていた自分を恥じた。

そして少女の身体が敵に振り払われ空を舞った時。私はマッスルフォームになって駆け出していた。


「私が来た!」


私は少女の身体が地面に叩き付けられる前に抱き止めると、そのまま他のプロヒーローに預け、拳を振り上げ敵の身体だけを拳圧で粉砕した。


「オールマイト……」


背後で、少女が涙混じりの声で私の名を小さく呟いた。

だから私はその呟きに答えるように、拳をそのまま空高く掲げて見せた。

拳を振り上げた時に巻き起こった風圧で、現場には一時的に雨が振り、少年の個性で引き起こされた火災も直ぐに鎮火された。

一瞬の静寂の後に湧き上がった歓声に、私はちゃんとヒーローであれたのだと思った。

ヒーローになるには個性は大切だ。

だが、それよりももっと大切な物を、少女は持っていた。

現場には、たくさんの人が居た。
複数のプロヒーローも、私も居た。

だが、その大切な物を持っていたのは少女だけだった。
無個性の少女だけが、それを持っていた。

だから私は決めた。少女を私の――私の持つ個性の後継者とする事を。

ヒーローと呼ばれる者の中で、代々秘密裏に受け継がれてきた個性『ワン・フォー・オール』。

それがあれば、少女は憧れのヒーローになれる。
少女ならば、きっと私の代わりを勤められる。そう、思った。

私は直ぐに少女を追い掛け探した。

そして先程の発言を謝罪し撤回すると、後継の話を持ち掛けた。

勿論、少女からの返事はYesだった。

少女の名前は『緑谷出久(みどりやいずく)』。もう直ぐ誕生日を迎える中学三年生だった。

無個性だった少女は、それを理由に同級生達からずっと苛められたり馬鹿にされていたせいか、自分に自信がなく少し卑屈な性格をしていた。

だが、その本質はとても頑固で強い。
一度決めた事は、余程の事がなければ絶対にやり遂げる。そういう子だった。


「そうそう緑谷少女」

「はい。何ですか?オールマイト」

「うん。たいした事じゃないんだけどね、この姿の時にヒーロー名で呼ばれるのはちょっと人目がね……」

「あ!ごめんなさい。でもそしたら何て呼べば良いんですか?」

「じゃあ八木って呼んでくれる?私の本名なんだけど」

「八木、さん。八木さんって言うんですか!?オールマイトの本名!」

「うんそう。『八木俊典(やぎとしのり)』っていうの。だからこれからはそっちで呼んでね」

「はい!分かりました。八木さん!!(ニッコリ)」


優しさは勿論だが、素直で真っ直ぐな少女は、とても育て甲斐があった。

他にも少女はヒーローオタクを自称するだけあって、ヒーローに関する知識は膨大で詳細。軽くプロをも越えていた。

もしかしたら、少女の観察力と分析力は私よりも高いのではないかと思うほど高かった。

それから私は、ヒーロー活動の合間に、少女に個性(OFA)を譲渡するための下準備を始めた。

少女の身体はまだ未熟で、いまのままでは譲渡する個性(OFA)に耐えられなそうだったから、まずは個性(OFA)に耐えうる肉体を作らなければならなかった。

短期間に肉体を作り変えるのは至難の業だ。
だが少女は弱音を吐くことなく、私が提示したトレーニングメニューを全てこなし、時にはそれ以上のオーバーワークをしてまでやりきった。

私のファンだという少女の志望校は、私の母校雄英高校だった。

それを聞いた時、都合が良いと思った。
丁度母校から、教員の話が来ていたから。

無事少女が雄英に受かれば、中学卒業後、私はもっと近くで、もっと的確に少女の指導ができる。

ただ、雄英のヒーロー科の入試は特殊で、個性(OFA)が無ければまず受からない。

なのでどうしても、受験前に少女に個性(OFA)を譲渡する必要があった。

個性(OFA)の譲渡はいつも少女とトレーニングをしていた海浜公園で行うことにした。

いつも通りのメニューをこなし、身体のクールダウンが終わってから、私は少女と向き合い話を切り出した。陽は傾き始めていたが、そう長い話でもないので問題はないだろうと思った。

少女は真剣な顔で私の説明を聞いていた。
私は一通り説明を終えると、私のDNAが詰まった毛髪を一本少女に差し出した。

だが少女はその毛髪を握り締め、何やらブツブツと考え込んでしまった。

個性(OFA)を受け継ぐ決意はできているはずなのに、どうしたのかと首を傾げていると、海風に咽た私は吐血してしまった。

少女と出会ってから、少女の前で吐血した回数は数え切れない。

だが、少女が私の吐血に慣れることはなく、目にする度に心配そうにするので、私は慌てて口元の血を手で拭った。

だがこの日は違った。

私の吐血した血を見た少女は、おもむろに私の手を掴み、あろうことかその血を舐めだしたのだ。


「しょ、少女!?な、何を!?」

「え?血よりも髪の毛の方が抵抗が無いって事は、別に血でも良いんですよね?」

「うん、まあね」

「だったら僕、血で良いです。やっぱり髪の毛は(食感的に)食べにくそうなので……(エヘヘヘヘッ)」


私が慌てて問えば、少女は無邪気な笑みを浮かべてそう答えた。


「……まぁ、少女が良いなら良いけど……(テレ)」


少女は猫が毛づくろいするように、丁寧に私の掌をペロペロと舐めていた。掌は勿論、指股を巡り、指先一本一本まで……少女に他意が無いのは分かっていたが、私は年甲斐もなくドキドキしていた。

そしてすっかり掌の血が無くなってしまうと、少女は今度は私の両頬に腕を伸ばし、私の顔を自分の方へと引き寄せ、掌同様にペロペロと私の口元を舐めだした。

少女の行動に驚き目を見開いていると、その隙に少女の柔らかな舌が私の咥内に入り込み、中に残る血の風味を探し動き回っていた。


「しょ、少女!?っちょ、ちょっと、たんま!!君何してるの!?(キスだよねぇ!?キスゥ!?いまのアウトだよねぇ!?)」

「え?口元にも血が付いてたので……どのくらい摂取すれば良いのか分からなかったので……(シュン)」


一つのことに夢中になると周りが見えなくなる傾向にある少女の顔は、やっぱり無邪気て真面目だった。

そこに私が感じたような邪な感情は、一欠片も無かった。


「あー……そうだねぇ、私も具体的な摂取量は良く分からないんだよねぇ。私の時は師匠に言われるがままに差し出された量をそのまま口にしていたから……(緑谷少女、もしかしてキスの自覚無い?)」

「どうしましょうか?」

「……身体に何か変化は感じる?」


私は早くなった鼓動を落ち着かせながら、少女にそう問いかけた。

個性(OFA)の譲渡が上手くいけば、継承者の身体に変化が現れるからだ。

つまり、変化がなければ譲渡は失敗。やり直しをしなければならない。


「うーん。じゃあ、念の為にもう少しいっとく?(ドキドキ)」

「はい!宜しくお願いします!!」


とは言うものの、先程吐血した分は少女が綺麗に舐めとってしまった。
少女に再び血を与えるにはもう一度吐血しなければならない。

だが少女はそれに待ったを掛けた。
いくら個性(OFA)の譲渡のためとはいえ、私の身体に負担がかかるのは嫌らしい。


「私に負担が無い方法ってなると、後は唾液位だけど……流石に唾液はねぇ……」

「僕別に平気ですよ!八木さんの唾液なら」

「…………君。時々過激だよね。おじさんちょっと引いちゃうよ(ドキドキ)」

「すみません。でも八木さんはおじさんじゃありません!!」


何となく分かってはいたが、恋は盲目とはいうけれど、憧景も盲目だったらしい。

それは目の前の少女に限った事かもしれないが……。


「うーん……あんまり時間掛けるのも良くないかもしれないし、じゃあ唾液……に、する?(ドキドキ)」

「はい!!」


私の戸惑いに微塵も気付かない少女の返事は、どこまでも元気で清らかだった。

変に意識しているのは自分だけなのだからと、気持ちを無理やり引き締め、私は自分の掌の上にさっさと唾液を垂らし譲渡を終わらせる事にした。

だが私が少し油断した隙に、またもや少女の舌が私の咥内に入り込んできた。

身長差があるので、少女は私の首に腕を回しバランスを取りながら舐める、貪る。私の唾液を、一生懸命夢中になりながら。

波の音と風の音。

そしてその中に混じる、それらよりも近い場所から聞こえる水音。


――ピチャ、ピチャ、ピチャ……。


これは一体何のプレイだろうか?否、新手の拷問だろうか?と、少女の舌と自分の舌が触れ合う感触にしばし私の思考は停止した。


「……っふ……はぁ……ピチャ」


思考が停止していたのは一瞬だったのか数十秒だったのか……はたまた数分だったのか分からない。分からないが、数年ぶりに味わう粘膜同士の触れ合いに、私の中の眠っていた欲が刺激された。


――無意識に強くなる、粘膜同士の接触。


いくらなんでもこれは止めさせなければという自分と、このまま受け入れてしまえという自分が、頭の中で言い争いをしていた。


「……ピチャ、ピチャ……んっ……っふぅ……八木、さ、ん……はぁ、後どのくらい舐めれば、良い、ですか?」


途切れ途切れに息を吐きながら、そう尋ねてくる少女の問いかけを耳にした瞬間。私は私の欲に負けてしまった。


――ッガ!?


私は少女の後頭部を鷲掴みにすると、腰を引き寄せ自らの意思で少女の咥内へと自分の舌を差し入れた。

そして、拙い少女の舌の動きとは比較にならない激しさで、狭い少女の咥内を嬲った。


「っふ!?んぅう!?……八木、さ……はぁ……?」


途端、息苦しさを増した少女に縋るように名を呼ばれ、少しだけ理性が戻ってきたが……私はもう止められなかった。否、止めたくなかった。


「……はぁ、はぁ、はぁ……緑谷少女。立ちっぱなしだと首と腰が痛いんで、場所を移そうか」

「……は、い」


少女が自分に従順な事を良いことに、私は少女の腕を引き、海浜公園の隅へと移動した。


 
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