ヒロアカ

□ごっこ遊び(ver.オル)
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■ごっこ遊び(ver.オル)-009



ちょっとお高めのコンビニスイーツを帰り道で買って、まだちょっと時間に余裕があったので、シャワーを浴びてスーツから私服に着替えた。

自宅に荷物を置いて着替えたら直ぐに来ると言っていたので、もしかしたら少女は走って来るかもしれない。

でも今日は怪我をしているので公共機関を使うかもしれない。となると、早くても後二・三十分はかかるだろうか?などと落ちつきなく、玄関扉の前でウロウロしながら少女の来訪を待っていると、チャイムが鳴った。

扉を開けると、ちょっとボロボロで、ちょっと逞しくなった少女が遠慮がちに立っていた。長袖長ズボンだったのは、恐らくステインとの戦闘時に負った怪我を隠すためだろう。袖口から覗く包帯に、ズキリと小さく胸に痛みが走った。

久し振りという事もあり、そんな少女の姿に私は思わず無言で覆い被さるように抱きついてしまった。

私の行動に、少女が腕の中でワタワタしていた。


「……や、八木さん?どうしたんですか?」

「んっ……」

「具合悪いんですか!?」

「ごめんね。何か色々あって……緑谷少女に会ったら気が抜けちゃったぜ。HAHAHA」


とりあえず笑って誤魔化してみたが、様子の奇怪しい私を少女が不安げに伺っていた。


「とりあえずいまは、もう少しだけ抱きしめさせてくれない?」

「僕で良ければ……いくらでもどうぞ!」


なので付け入るように、そっと強請り頼み込めば、言葉の意味を理解しているのかいないのか……少女は両手を左右に広げ、笑ってそれを了承してくれた。


「ありがとう。じゃ、お言葉に甘えて……よっと!!」

「はへぇ?」


ならば遠慮なくと、少女を片手で抱え上げると、私は素早く反対側の手で扉を閉め、そのまま少女から靴も鞄も取り上げて、真っ直ぐ寝室に向かった。

キョトンとして、一拍。
遅れて言葉の意味を理解したらしい少女が、腕の中でわずかに身体を強ばらせ、顔を一気に赤くさせた。


(やっぱり分かってなかったかぁ)


そんな少女の反応に、思わず私は心の中で苦笑いを零した。


(おじさんなのに堪え性がなくてゴメンね)


私はそんな少女の反応に気付かないふりをして、ベットの上で胡座をかくように腰を下ろすと、その上に少女を向かい合わせになるように下ろした。

そして、無言でその身体を抱きしめた。ギュウギュウと腕に力を入れて、少女が逃げ出さないように、私の腕の中に閉じ込め、おでこやほっぺに触れるだけの口付けをたくさんした。

照れたように、恥じらうように頬を染め、少女の頬が緩んできたら次は、髪や身体にも、同じように口付けをしながら触れて行く。ゆっくりと、その存在を確かめながら、一枚ずつ着ている物を肌蹴させながら。

密着している分脱がしづらかったが、例え一瞬でも私は少女を手放したくなかった。

徐々に顕になっていく肌に、唇や頬を擦り付けて、自分の匂いと印を刻み付けて行く。

ただ触れるだけじゃ物足りない。満足できない。
吸って舐めて噛み付いて……五感全部で少女を感じたかった。感じていたかった。

このまま小さく柔らかい、脆いのに靭やかなな身体に溺れてしまいたかったが、その前に言うべき事は言わなければならない。


「またこんなに怪我して、聞いたよ?無茶しちゃ駄目って言ったでしょ」

「……ごめんなさい、八木さん」


強い口調でなかったのに、私の小言に少女は眉を下げて大きな目を潤ませ謝罪の言葉を呟いた。

別に、少女は分かってないわけじゃないのだ。頭は良いのだから。分かっていても、身体が勝手に動いて止められないのだ。

それを目にしてしまうと、知ってしまうと、沸き起こる感情を自分では押さえる事ができないのだ。少女のそれは、理性ではなく本能に近いものだから……。

だからきっと、何度注意してもあまり少女には意味が無い。

だけど私が注意する事で、少しでも少女がそれを意識してくれたなら、走り出す前に、ちょっとだけ足を止めて、それを思い出してくれたなら……きっと少しだけ結果は変わる。変えられる。
もっと多くの人を救えるようになるし、負うべき怪我を減らす事ができる。

服の下に隠されていた包帯を指先でなぞりながら、私は願う。懇願する。
無茶ばかりする少女の未来を、私は憂う。


「身体が動いちゃうのはもうどうしようもないけどさぁ、怪我はしないでよ。おじさん心配で心配で寿命が縮んじゃうじゃない」

「八木さんはおじさんじゃありません!でも、八木さんの寿命が縮んじゃうのは嫌なので、できるだけ善処はします!」

「……うん。そうしてね」


――何の効力もない、ただの口約束。


それでも、少女がそう約束してくれた事が嬉しかった。

私は少女の頬に手を添えて、俯いてしまった顔を上向かせると、覗き込むようにジッと視線を一度合わせてから、優しく優しく口付けた。

薄っすらと、湿り気を帯びた唇を押し付け重なった箇所から広がる幸福感。

それをもっともっと感じたくて……肌と肌が触れ合う合間に交わす会話は自然と減っていき、代わりに増える荒い息遣いと大きくなる水音。

少女の身体の奥から止めどなく溢れ出てくる、熱くとろりとした蜜を指に絡め、撫でるように、掻き混ぜるように、押し広げながら進んだ先は、どこよりも柔らかくて熱くて震えていた。

切なげに、漏れ聞こえる声と不安げに彷徨う少女の指先に、煽られ昂まる欲は際限がなく……もっと奥へ、もっと深く、もっと確かに繋がりたいと私を急かす。

私の指に翻弄された少女がギュッと瞼を閉じ、私が与える快楽を、必死に受け止めようとしている様が愛しくて愛しくて、その愛しさに胸が張り裂け気持ちが溢れ出すような、そんな感覚に目眩を感じた。

そしてそのまま、少女と本格的に繋がろうとした瞬間。
物凄い勢いで込み上げてくるそれを、私は堪えられずに少女の身体の上に吐き出してしまった。

ビチャリという音と共に、少女の身体を一瞬で染め上げた赤い液体は、私が吐血したそれで……固まり罅の入ってしまった甘ったるい空気は、見る見る飛散し消えてしまった。

驚き先に言葉を発したのは少女の方で、会うのが久しぶりならば、回数の減っている吐血を目にするのも久しぶりなわけで……少女は私を心配するあまり、すっかり涙目になってしまった。


「や、八木さん!?」

「……ご、ごめん。ちょっと昨日寝てなくて……だ、大丈夫だから、ちょっとたんまね!(ヤバイ、興奮し過ぎた!)」

「え!?寝てないって……こんな事してる場合じゃないじゃないですか!?」

「え、だって……(したかったって言うか、したいんだけど……)」

「だってじゃないですよ!もう、ここは僕が片付けるんで、早く口洗いで来てください!!」

「え゛ぇー……」


体調が優れないわけでないと言おうとして、うっかり徹夜だった事を明かせば、少女の顔色が微かに歪み、行為は強制的に一時中断となってしまった。

残念に思いながら口を洗ごうと洗面台の前に立つと、鏡の中には寝不足と吐血のせいで若干青白い自分の顔が映って見えた。目元には薄っすらと隈も浮かんでいる。


(あ゛ぁー、これは気にするなって方が無理かな……)


私が口を洗いでいる間に、少女は自分の身体に付いた血もおざなりに、クローゼットから新しいシーツを取り出し取り換え、パタパタと部屋の中を動き回っていた。

口の中はサッパリしたが、熱の消えたシーツの感触にちょっぴり気持ちが萎んだ。

汚れたシーツを洗濯機に放り込み、肌蹴ていたシャツを羽織直し、ベットに腰掛ける私の元へと戻ってきた少女の顔は浮かない。


「……えっと、ありがとう。でもって、本当にごめん!もう大丈夫だから続きを……」

「何言ってるんですか?今日は僕もう帰るんで、ゆっくり休んでください!残ってる話しはまた学校で昼休みにでも……」

「え!?それは、ちょっと……」

「だって、八木さん体調良くないですよね?何か窶れてるし……」

「でもほら、途中だし……私のせいで中断しちゃったけど、おじさん最後までしたいなーって……久しぶりなんだし……」

「八木さんはおじさんじゃありません!って言うか、そんな事よりも、自分の身体を大切にしてくださいよ!」

「いやいやいやいやいや、それは少女には言われたくないぜ!!」

「ん゛ぅー!!そうかもしれませんけど、いまは吐血した八木さんの方が大事にしなくちゃいけないと思いますぅ!!」


気不味さをグッと堪えて仕切り直しを提案するも、考慮する間もなく正論で却下されてしまった。

基本的に少女は行為を断らないので、多分それだけ私の身体を心配しているのだろうが……多少熱が治まったとはいえ、あれだけ昂まった熱は、ちょっとやそっとじゃ冷めてはくれない。

少女の身体だって、頬の赤みは薄くなったが、熱が完全に消えたわけでないのだから、ちゃんと最後までしてあげたい。いやしたい!!


「吐血なんていまさらでしょ!?それにホラ!私のコレ、見てよ!!このままじゃ中途半端過ぎて、休むに休めないぜ!?」

「う゛っ……!!」


私は思わず剥き出しにしたままの自らの下半身を指差し、少女に迫った。
かなり情けなくて間抜けな訴え方だとは思うが、分かりやすくて説得力はあるだろう。

話しの流れで局部を直視してしまった少女は、顔を真赤にしながらしばらく思量し何かを決意すると、思いがけない行動に出た。


「……分かりました。なら、僕がしますから、八木さんはおとなしくしててください!!(……でもやっぱり恥ずかしぃ!!)」

「……え!?少女がするって……はっ?」

「恥ずかしいんで目、瞑っててください!!後、実践するのは始めてなんで、多分下手ですよ」

「っちょ、緑谷少女何する気!?」


ベットに腰掛ける自分の足の間にしゃがみ込んだ少女に、まさかと思い静止を試みるが、一度やると決めた少女の行動力は半端ない。

少女は目の前で主張し続ける私の一部に自らの手を伸ばし、軽く握り締めるとゆっくりと上下に動かし始めた。

そしてそのまま、その先端を自らの口の中に含んだ。


「の゛ぉ゛あ゛ぁ゛あぁぁ!?ん゛ぅぅぅぅ!?っちょ、まっ……う゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!?」


待ち望んでいた感覚とは違うが、それに近い感覚と、一生懸命自分のソレに奉仕している少女の姿に、私の頭は思考と理性を速攻で放棄した。


(何かどんどん弱くなってないかな?私の理性……)


数分後。少女の頑張りで絞り出された私の欲は、少女の口と手だけでなく、顔から胸から……かなりの範囲に飛び散り少女を汚してしまった。

あまりの惨状に、余韻よりも罪悪感が強く、想定外の量と勢いにキョトンと目を瞬かせる少女が居た堪れなかった。

否、物凄くエロくてそのまま押し倒したいくらいだったのだが、流石にそれは……戻ってきた理性が全力で止めた。押し止めた。

だってそれよりも、いままでした事もさせた事もないこの行為の知識の出処を、私は少女に追求しなければならなかったから。


「あのさ、一応念のため聞くけどさ……どこでこんな事覚えたの?おじさんまだ教えてないよね?」

「えっと……峰田くんに聞いて、後ネットで色々調べてやり方覚えました!」

「…………!!!?(相澤くんぅう゛ぅ!!1-Aの保健体育と性教育どうなってるのぉ!?)」


何となくそんな気はしたけど、何で少女は峰田少年とそんな話しをしたのだろうか。よりにもよって性の問題児峰田少年と。

どちらかというと、少女はそっち方面の興味は薄かったはずなのに……。

だから私がゆっくりと、ちょっとずつ教えて行こうと思ってたのに……私の楽しみが……。


「とりあえず男性は出せばスッキリして元気になるからって、この方法なら男性は気持ち良いだけで疲れないからって……」

「間違っちゃいないけど、そうじゃないんだよ!ん゛ぅぅぅー……それだけじゃないんだよ……気持ちとか過程が大事であってだねぇ……」

「……駄目、でしたか?僕じゃ……気持良くありませんでしたか?」

「駄目じゃないよ!?気持ち良かったよ?凄く興奮したよ?でもね、そうじゃなくてね……出す事だけが全てじゃないからね!?そこんところだけは、ちゃんと訂正して!!お願いだから」


しかも情報の出処が峰田少年なので、かなり偏った極論として、少女の脳にインプットされてしまっている。これはちょっと問題だ。何か色々と、私との行為も湾曲して認識しかねない。

少女の肩を掴み、ガクガクとその身体を前後に揺らしながら、少女の認識を正そうとする私は、ちょっぴり涙目でかなり必死だったと思う。

が、その必死さが少女に伝わったかどうかは……かなり怪しい。


「とりあえず、さっきのこと(吐血)もあるから、君一旦シャワー浴びてきなさいね。顔からなにから、(私の体液で)ちょっと凄いことになってるから……(ハァ……)」

「……はい」


ひとまず少女にシャワーを浴びるように言い付け、頭を抱えた私はそのまま後ろ向きにベットに倒れこみ、行為後とは思えぬ溜息を吐き出した。

そのまま少女が戻ってくるのを待っていたら、欲を出した後特有の気怠さと、徹夜明けの睡魔が今更ながらにやってきて、私はうっかりそのまま寝入ってしまった。

かなり深く寝入ってしまったようで、私が目を覚ましたのはそれから数時間後の事だった。


 
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