ヒロアカ

□ごっこ遊び(ver.オル)
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移動した先は、街灯もない岩陰。こんな所に夕暮れ時のいま、近付く人はまず居ない。通りからは完全な死角だ。

私は岩に背を預け、上着の前を寛げると、砂の上に胡座をかくようにして座った。

そして少女を膝立ちにさせ、自分の腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。少女の戸惑いには気付かないフリをして。

そして今度はゆっくりねっとりと、少女の咥内を味わうように舌を這わせた。

少女は腕の置き場わ分からなかったのだろう、私の着ていたブカブカのインナーの襟口を、遠慮がちにギュッと掴み、私の与える刺激に耐えていた。

私は少女よりもずっと大人で、世間では正義の象徴で、ナチュラルボーンヒーローと言われている。本来罪を取り締まるべき側の人間。清廉潔白でなければいけない。

なのに、道徳的にも倫理的にも問題のあるこの行為を、止める事ができない。

傷付き衰えて行く身体を受け入れつつも、どこか受け入れきれずに足掻いていた心は疲れていて……癒やしを求めていた。知らず、温もりを求めていた。

少女が仕掛けてきたから、少女が拒まないから、私は悪くないと、無知で考え無しの少女のせいにして推し進める行為は、どう考えても自分勝手で酷いものだった。自分じゃなかったら、最低だと罵っていただろう。

私と少女が出会って半年と少し。私は少女の思考も行動もそれなりに熟知している。趣味趣向に関しても。

だから私には分かっていたのだ。
個性(OFA)を譲渡する時、私が毛髪を差し出せば、少女がどういう反応をし、行動するのか……。

だから私は無意識に、ワザとDNAの摂取に毛髪を選んだのだ。他の選択肢を少女の前にチラつかせながら。

勿論少女なら、私が強く言えば、嫌々でも指示に従い毛髪を口にしただろう。そういう子なのだ。この目の前の少女は。

少女に出会うまで、こんな身体になった私は忘れていた。
ヒーローの前に、自分もただの人で、それなりに欲も抱くし狡賢いのだという事を。

目の前に、美味しそうな食べ物があれば、誰だって食べてみたくなる。


――それは自然な事だ。


違いは実際に手を出し食べてしまうか、見ているだけで我慢し満足しているかで、決して欲が無いわけじゃないのだ。

普段なら我慢できる、抑え込む事など容易い欲に、こうもアッサリ屈してしまったのは、魔が差したという奴なのかもしれない。

恐らく年齢的に、少女は未経験だ。
仲の良い友達は居ないと言っていたから、性に関する知識も少ないだろう。

だからきっといま、少女の頭の中は快楽と理性の間で酷く混乱していることだろう。

さっきまで、あんなにも澄んでいた少女の緑色の目は虚ろに溶けていて、生理的な涙に濡れている。

反射的に漏れるぎこちない喘ぎ声に、少しでも拒否の言葉が混ざらないように、私は休みなく少女の口を塞ぎ続けた。

片手で少女の身体を固定し、もう片手は素早くウェアの中へと滑りこませ、自分とは違う、柔らかく張りのある瑞々しい肌触りを楽しむ。

まだ薄いが、偏りなく綺麗に付いてきた筋肉は、少女の努力の賜物なのだが、側で見守り指導してきた身としては、それを作り上げたのは自分なのだという自惚れがある。

そしてその自惚れる心は、ならばこの身体を自由にして良い権利も自分にはあるのだと、自信ありげに嘯くのだ。

やがて少女は始めて感じる痛みと圧迫感に呻き声を上げ、身体を引き攣らせながら捩った。


「ご、ごめんね。痛い、よね?少女は初めてだから……」


痛みで意識が引き戻されはしたが、現在進行形で起こっている状況が理解できてないようで、少女はポロポロと涙を流しながら困ったように私を見ていた。縋るように、助けを乞うように。

そして、カタカタと小さく身体を震わせていた。

その姿に罪悪感を感じるのに、熱が煽られるだけで、律動する腰が止まらない。

私は少女をあやし気遣うフリをしながら、その身体を揺すって突いて抱きしめた。

腕の中で、跳ねる身体が踊る。
私の動きに合わせて。

荒れた呼吸と、まだ出し慣れていない拙い喘ぎ声が、耳に心地良い。

もっともっとずっと、見ていたい。聞いていたい。

成長途中の少女の中は、大人の自分には少し狭くて窮屈だったが、その分熱や感触がダイレクトで敏感だった。

私はとにかく夢中になって、少女の中に自分自身を擦り付けると、そのまま欲を放った。

とんとご無沙汰だったせいか、涙でグチャグチャの顔と、ハクハクと整わない呼吸。事後の余韻に震える四肢に煽られて、私の腰はたいして間を置かずに再び動き出した。

もっともらしい言い訳を口にしながら。


「すまない。うっかり中に出してしまった。今度はちゃんと口に出すからもう一度……」


流石に疎い少女でも、この行為が個性(OFA)譲渡のための行為ではなく、ただの性行為なのだと気付いているだろう。

だが少女は抵抗することなく行為の続きを受け入れ、コクリと頷き従った。

自分でも不味いだろうなと思うそれを、相手に咀嚼させる行為は、きっと男の本能的なものでただの征服欲だ。

二度目の行為が終わり、砂の上に四つん這いになった少女は、初めて口にする男の欲の臭いと味に顔を顰めながらも、言われた通りにそれを飲み込んだ。少しずつ、回数を分けて。

頑張って、口に出された欲を全て飲みきった少女の頭を、私が『偉い偉い』と撫でてやると、少女は嬉しそうに目を細め笑った。

その後、気怠い身体を叱咤し服装を整えていると、少女は自分の身体の中に、何か熱いものが流れて行くのを感じた。

それは個性の譲渡が無事に行われ、少女に個性が継承された事を示す、合図のようなものだった。

個性の譲渡は、前継承者がそれを望まなければ行われない。

だから、たかだか数分で済む個性の譲渡にこんなに手間取ってしまったのは、私が直ぐに終わらせたくないと思ってしまったからだろう。

行為に耽ってしまっていたので、すっかり日が暮れてしまい辺りはもう真っ暗だった。

なので今日の所はもう帰宅して、継承した個性(OFA)の使い方等に関しては、後日日を改めてする事にした。

無理をさせた。同意が有ろうが無かろが、大人である自分が自重しなければいけなかったと、私は何度も何度も少女に頭を下げた。謝罪の言葉を口にした。

だが少女は、気にしていないから、大丈夫だからと言って譲らなかった。

なので最後は謝り合戦みたいになってしまい、二人で吹き出してしまい、その決着も後日という事になった。

いつもは少女とは、海浜公園の入口で別れるのだが、今日は人気のある住宅街まで送って行った。
時間帯も時間帯だったし、トレーニング後の行為で疲弊した身体が心配だったので。

勿論、もう少し私が少女と一緒に居たかったというのもある。

あの時は流されただけで、本当はあんな事、したくはなかったのではないか?
後になって冷静になったら、後悔してはいないだろうか?
尊敬していた私の愚行に、傷付いてはいないだろうか?

そう思うと、私は怖くて少女にしばらく連絡ができなかった。

だが、師匠としても、少女に手を出した大人としても、このまま会わないでいるわけにはいかなかったので、それから五日後。勇気を出して、私はいつもの海浜公園で少女と待ち合わせる事にした。

待ち合わせの時間よりも早く行き、緊張しながら一人海を眺めて居ると、少女の方も待ち合わせより早くやって来た。

恥じらうように、きっちりと着込んだトレーニングウェアの裾を握り締めながら。


『私に会いに来てくれた』


それだけで、嬉しかった。

急に態度を変えたりベタベタして、年甲斐もなくがっついていると思われたくなかったので、私はなるべくいままでと同じように少女に接するよう心掛けた。

それに少女はいま、大切な受験の前なのだ。
最低でも、受験が終わるまでは我慢しよう。私はそう考えた。

だが少女の受験が終わったら、教員の勤務準備で私の方が忙しくなってしまった。

とはいえ、以前も毎日会ったりしていたわけではなかったので、会う頻度的にはあまり変化はなかった。

それでも時々は理由を作って、少女を私の部屋に連れ込んで、人目を気にせず二人だけの時間を楽しんだ。

だけど少女はこういう関係に慣れていなかったので、空気で察するという事ができなくて、私は少女に触れたくなった時、必死にその理由を探した。

しかしそれも回数を重ねるごとに、私の仕草や眼差しだけで伝わるようになり、理由が無くとも自然に触れ合えるようになった。

自分からはまだ恥ずかしいのか、少女から進んで行為を求めてくる事はなかったが、いざことに及べば少女は嫌がらなかった。

こんな身体になり、体力だってずっと少なくなったのに、少女と過ごしたり行為をした後は、不思議と身体が軽く感じる事が多かった。
一緒に居る時間が長ければ長いだけ、触れ合えば触れ合っただけそう感じているようなので、プラボシー効果というやつなのかもしれないが……。

とにかく少女と出会ってからの私は、心身共に充実した日々を過ごしていた。


 
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