ソードアート・オンライン Again
□第7話
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キリトとアスナが22層で思い出の家を購入してから随分と時間が経った。
外の時間は今頃年末で誰もが年越しの準備をしているであろう頃、SAO内ではついにアインクラッドの半分、第50層フロアボスの攻略に差し掛かっている。
この頃になると、キリトが団長を務める白黒騎士団の団員数は後方支援組みも込めて50名を超え、最前線で戦う人数は丁度半分の25名になっており、団長キリトは【黒の剣士】、副団長のアスナは【閃光の姫騎士】の異名で呼ばれている。
ヒースクリフ「さて諸君、これより第50層フロアボス攻略会議を始めたいと思う」
ボス攻略会議に集まったギルドは白黒騎士団の他に、アインクラッドで現在唯一ユニークスキルを取得したヒースクリフ率いる血盟騎士団、クライン率いる風林火山、ディアベル率いるアインクラッド解放軍、それから聖竜連合だ。
会議はヒースクリフが仕切っており、25層に続くクォーターポイントのフロアボス攻略会議ともあって緊張感が普段の攻略会議よりもある。
ヒースクリフ「今回、我が血盟騎士団とディアベル君の軍から派遣した情報部隊からの報告によると、ボスの名は『ティアマト・ザ・ロアードラゴン』。HPはざっと見積もっても3000000オーバー……やはりクォーターポイントのボスというだけあってかなりの強敵だ」
キリトも前回は苦戦させられた相手だ。だが、それだけ強敵という事もあり、ドロップアイテムはエリュシデータという最高の剣なので、納得も出来よう。
ヒースクリフ「先ずは戦法についてだが、防衛は聖竜連合に任せたい」
リンド「構わん…」
聖竜連合のリーダーのリンドは無愛想にヒースクリフの提案を受け入れた。それに頷くと、次に陽動する部隊についてヒースクリフは数の多い軍と小回りの効く少数精鋭の風林火山を使命する。
ディアベル「任せてくれ。宜しく頼むよクライン君」
クライン「おう、任せなって!」
ヒースクリフ「うむ、そしてオフェンスは攻撃力の高い我々血盟騎士団とキリト君率いる白黒騎士団で行う」
キリト「……ああ」
ヒースクリフ、いや、茅場晶彦に対する殺意を押し殺し、キリトも文句は無いと頷いた。
ルクス「キリト様…」
キリト「大丈夫だルクス、心配しないでくれ」
キリトの顔色が優れないのを見抜いてか、キリトの後ろにずっと控えていた少女…団長補佐官となったルクスが心配そうに声を掛けてきた。
また、副団長であるアスナもこの場に居て、彼女にも副団長補佐官という立場の、オレンジ色の髪に青い服を着た女性プレーヤーが付き従っている。
アスナの補佐官の名はフィリア。
元ソロプレーヤーだったのをスカウトした、ソードブレイカーと呼ばれる短剣を武器にしている凄腕のダガー使いだ。
宝探しを好んでおり、保有スキルも《索敵》や《隠蔽》、《鍵開け》等の宝探しに関するものをマスタークラスで揃えている、自称「トレジャーハンター」だ。
面倒見も良く、よくユイの遊び相手をしたり、小さな子供が好みそうな珍しいアイテムをゲットすればプレゼントしたりしてくれている。そのため、キリトとアスナ以外の白黒騎士団のメンバーの中で特にユイに懐かれていたりする。
ヒースクリフ「では、攻略日時は明日、12月31日の正午だ。この戦いを終えて、無事に年越しを祝おうではないか」
ヒースクリフの言葉に誰もがやる気に満ちていた。確かに未だSAOに囚われたままではあるが、年越しする事に変わりない。ならば無事に攻略を終えて、誰一人欠ける事無く年越しをするのだと、皆が張り切っている。
ヒースクリフ「ああそれと、キリト君」
キリト「…何か?」
ヒースクリフ「この後、少し時間あるかな?」
キリト「……少しだけなら」
ヒースクリフ「二人っきりで話したい事があるんだが、良いかな?」
ヒースクリフがキリトと二人っきりで話したい事、それが何なのか、凡そだが検討は付く。だが、ここはあえて気付かないふりをして誘いに乗る事にした。
キリト「アスナ、ルクス、フィリア、悪い…先にホームに戻っていてくれ」
ルクス「お気をつけて、キリト様」
フィリア「ユイちゃんが待ってるんだから、早く戻ってきてね?」
ルクスとフィリアが去ったが、アスナだけは残り、心配そうにキリトを見つめる。だから、キリトは優しく微笑み、アスナの頬に手を添えた。
キリト「大丈夫……少し、話をするだけだから」
アスナ「うん、わかった……先に待ってるからね」
頬に添えられたキリトの手に己の手を重ねたアスナはそう言ってそっと離れると、集会場を去り、漸くこの場にはキリトとヒースクリフの二人だけになる。