ソードアート・オンライン 青薔薇の騎士と金木犀の姫騎士
□第2話
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ユージオside
青い光に包まれ、同時に草原の景色が消え、青い光が薄まると、風景が戻った……が、そこはすでに夕暮れの草原ではなく、広大な石畳や周囲を囲む街路樹、瀟洒な中世風を基調とする街並みと、黒光りする巨大な宮殿がある場所。
ここは……
クライン「おいおい、何でいきなりはじまりの町の中央広場に飛ばされてんだ!?」
そう、僕達が今いる場所は、ゲームのスタート地点である(はじまりの街)にある中央広場だった。
そこには他のプレイヤーも集められているようで、次々と青い光に包まれたプレイヤー達が集まってきている。これはどう見ても…
ユージオ「…強制テレポート?」
そして、鐘の音が鳴り止んだ。そして、辺りのざわめきだけが残った。
人々が戸惑う中……
アリス「あ……上……」
とアリスが声を上げ、広場に集まった俺達プレイヤーは上を見る。
すると、約100mほど上空の第2層の底を、真紅の市松模様が埋め尽くしていた。
よく見れば、市松模様のひとつずつに同じ単語が綴られている。
【Warning System Announcement】
アナウンスを知らせるその単語に徐々にざわめきが終息していく。
しかし、続いた現象は、僕の…いや僕達の予想を大きく裏切った。
空を埋め尽くす真紅のパターンの中央部分が、まるで巨大な血液の雫のようにドロリと垂れ下がり、高い粘度を感じさせる動きでゆっくりとしたたった。だが、地面に落ちる事は無く、赤い液体は空中でその形を変えた。
出現した真紅のフード付きのローブをまとった巨大な人。いや、正確には下からフードの中身を見たところ、顔がなかったので、人ではない。
人の形をした何かは周りがざわめくのを抑えるかのように、白い手袋がはめられた腕を広げた。
???『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。』
低く、落ち着いた、よく通る男の声は遥か高みから降り注ぐ。
???『私の名前は茅場 晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』
ユージオ「なに……?」
驚き、声を漏らすとアリスが震えながら僕の手を握ってきた。
その表情が不安に満ちていて、そんなアリスの手を僕は強く握る。
にしても…まさか、茅場 晶彦が出てくるとは。
茅場 晶彦
彼の名を知らない者はこのゲーム内にいないだろう。
数年前まで数多ある弱小ゲーム開発会社のひとつだったアーガスが、最大手と呼ばれるまでに成長した原因は、若き天才ゲームデザイナーにして量子物理学者の茅場 晶彦がこのSAOの開発ディレクターであると同時に、ナーヴギアそのものの基礎設計者でもあるからだ。
プレイヤー@「本物かよ…」
プレイヤーA「ずいぶん、手こんでるな」
呑気な声がそこらへんから聞こえた。
そして、茅場 晶彦は言葉を続けた。
茅場『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、(ソードアート・オンライン)本来の仕様である。』
クライン「し、仕様…?」
クラインが割れた声でささやいた。
その語尾に被さるように、滑らかな低音のアナウンスは続いていく。
茅場『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない。……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合ーーナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊かし、生命活動を停止させる』
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