物語

□SS
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俺にはずっと気になっていることがある。
坂本くんは俺のことが本当に好きなんだろうか。
仕事で外にいるときは当たり前ながらリーダーとして頑張ってくれる。
二人きりになると甘い言葉を囁いて愛してるとしつこいくらい言ってくれる。

悪く言えばクサい感じの台詞も何のためらいもなく踏み込んで俺の心臓が押し潰れそうなくらいだ。

でもそれだけ軽々と簡単に思いを伝えるなんて本当に俺のことが好きなんだろうか。

俺はもしかして二人きりでいるときに言わせるような義務みたいなオーラを出してるのかもしれない。

「坂本くん」

長い脚を組んで新聞を開いている坂本くんに近づいて声をかけた。

「うん?」

坂本くんはふわりと優しく微笑んで自分の隣をトントンと叩いた。

隣に座れってことなんだろうか。
なんかすごく恥ずかしくなって肩が触れないようにして座った。

「坂本くん」

「どした?」

「坂本くんはさ…」

「うん」

「俺が浮気したらどうする?」

一瞬空気が張り詰めた、気がした。

坂本くんは俺の顔をまじまじと見るとフッと鼻で笑った。

「お前そんなことでマジな顔してたの?」

笑いを零す坂本くんが面白そうに距離を詰めた。

「…そんなことじゃないし」

「拗ねんなよ」

頬をプニプニとつつかれる。
詰められた距離を突っぱねようとして坂本くんの方に腕を伸ばすとそのまま頬を両手で包まれた。

大きな手に異常にドキドキして緊張して包まれた両頬が熱い。

すぐそこには坂本くんの顔があって鼻にキスを落とされる。
恥ずかしくて目を伏せた。

「剛」

優しく俺の名前を呼ぶ。

「剛は優しいから俺のことが嫌いになっても俺に気遣って浮気なんてしない」

思わず顔を上げると真剣な表情がそこにあった。
俺はこんなにも愛されてたのか…
疑ってバカみたいだ。

「……嫌いになんかなれねぇよ」

可愛げの欠片もない俺の返事に坂本くんは甘いキスをくれた。
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