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□飴
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ルハンはいつも飴を舐めている。決まって機嫌が悪い時に、だ。別にタバコを吸うわけでもないので、単純に飴が好きなのだろうか。

今日だってまた、収録前なのに飴を舐めている。メイクさんが困るからやめてほしいのだが、本人は誰に言われても直す気は無いらしい。
今日もまた、椅子に不満げな顔で腰掛けながら、舐めている。

「飴、今日は何味なの、それ」
「今日はイチゴ。」
「甘いのいっつも舐めてるよな」

ルハンは決まって甘めの味を舐めている。そんなに甘い物は得意だったか、ルハンは。
相変わらず遠い目をしながら受け答えをするルハンを見下しながら、一人立っていた。

「舐めてるの、理由あるの」

そういえば、今まで何故だか聞きづらくて、聞いていなかった。

「教えない」
「何でだよ」
「何でも」

何時だって飴を舐めている時は機嫌が悪い。子供か。

「その理由お前しか知らないの」

「そうだね」

絶対嘘だな。こいつが即答してくる時は、嘘を隠したい時だ。

「お前、タバコ吸うわけでもないじゃん」
「そうだけど」
「じゃあ何で「俺にも、俺の事情があんだよ、ミンソガでも知らない秘密がな。でもその方がカッコイイだろ」

ルハンは飴を噛み砕き始めた。最後に小さくなって抵抗の出来ない相手をナイフで刺し続けるかのごとく、バリバリと素知らぬ顔で噛み砕くのが仕上げの合図だ。そして噛み終わった後は機嫌が良くなる。
こんな変な癖、ファンが知ったらどうなるんだか。盲目的なファンはそれすら可愛らしいと言うだろうか。この死んだ様な目で飴を噛み砕くルハンを。
底なし沼の様な目が、目の前に二つある。誰を写すこともない。硝子玉が転がっている。



「ルハン、抜けたんだって」

相変わらず綺麗な顔である。僅かながらルハンを思い出す。スタジオの隅でそれとなく俺が一人の時にサラリとジェヒョさんが言ってきた。

「はい」
「アイツ、一人でやってけると思ってんのかな、アイツにしては馬鹿な選択をしたもんだなーと思って」
「ルハンが、ですよね」

ルハンの先輩だし、この人のグループも事務所の所属関係で色々あったのだから、てっきりルハンの考えを支持しているのかと思っていた。が、そうではないらしい。

「そっちの事務所がどんな事してるか知らないけど、アイツ一人じゃ多分その内倒れるよ。君は知ってたと思うけど、ルハンずっと飴舐めてただろ。」

「アレ、依存症なんだよ、昔っから。愛情不足から口になんでも入れたくなるんだ」

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