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□回想
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「また倒れたのか、レイ」
「うん、でも、もう大丈夫。ちゃんと寝たし…」
「本当に、無理だけはやめてくれ。それとも無理矢理働かされているのか「そんなことないよ、事務所のせいじゃない。僕の管理不足だから」
「今から会えたらいいんだが、生憎仕事がな…」
「いいよ、こうやって電話してくれるだけで充分」

そう、海外を飛び回っているスーパモデルがこの、まだデビューしてばかりのひよっこの僕に電話をこうしてかけてくれるだけで奇跡と言っても過言ではない。
電話越しにでも、彼が心配してくれているのがわかる。
それだけでも、僕には勿体ない。

「一週間後には、韓国に行けるようにする、だから安静にな」
「うん、わかってるよ」

明日からも、仕事があるが。彼にはバレる嘘でも嘘をつきたい。
何時だって彼が自分より優位に立っているのを覆したい、一種の弱者の足掻きというわけだ。

「なあ、レイ。お前の本名、知りたいんだ。探しても出てこなくて、困ってる」

そりゃ、そうだ。僕は五歳のときから、『レイ』であり、僕の本名を知っているのは僕と、孤児院の院長だけである。アイツが名付けたしにては、なかなか綺麗な名前である。

「うん、僕はレイ以外の何者でもないからね」
「そうか、俺には隠し事をしないでくれよ、レイ…」

レイ、そう彼が呼ぶ度に、彼は寂しそうな顔をするのである。

「なんだか、レイと呼んでいると、お前の周りの人間と俺は一緒なんじゃないかと思えてな」
「愛に名前は必要かな」
「そういう訳じゃないんだがな…、お前のテリトリーに踏み込みたいだけだよ」

テリトリーは破りたくても破ってはならない。越えてはならない一線が、僕達にはある。

僕達はそれでいいんだよ。
まだ愛を知らなくていいんだ、クリス。




だって、君の本当の名は、クリスじゃない事くらい、僕は知ってるから。

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