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□花吐き病 患いルハン
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-嘔吐中枢花被性疾患(花吐き病)-
正式名称は「嘔吐中枢花被性疾患」で花吐き病は通称である。
遙か昔から潜伏と流行を繰り返してきた。
片思いを拗らせると口から花を吐き出すようになる。それ以外の症状は現在確認されていない。
吐き出された花に接触すると感染する。
根本的な治療法は未だ見つかっていない。ただし両思いになると白銀の百合を吐き出して完治する。


自分の口から一枚の淡紅色の美しい花弁がぽたりと生み出された時に、その花が余りにも美しく、見とれてしまった。

あの時既に自分は病に陥っていたのかと、今なら嫌というほどわかる。




「ミンソガにあげようか、これ」

二人になった宿舎のリビングで、一つの花束を手に取って言った。

「どうしたのこれ、こんなにたくさん。でもルハンのファンの子からのだったら受け取れないわ」

茎のない、花束とは言いがたい白の紙にはらりと包まれた花々。少しでも力を入れれば潰れ溢れてしまいそうである。

「もう見たくないんだ、こんな花」

花をミンソガに押し付けた。

「ちょっ、おい」

ミンソガが受け取った瞬間、花が一輪落ちた。

「これ、もしかして海棠?」

ミンソガは猫のように匂いを嗅ぎながら問いかけた。

「そうだよ、よく知ってるねミンソガ」

正直驚いた、ミンソガがこの花を知っ
てるなんて。

「中国で一番美しい花だろ、Mの活動で中国の事をかなり勉強したし、教えて貰ったりしたから」

そうだよミンソガ。唐の玄宗が酔って眠る楊貴妃をたとえた美しい花だ。
たとえ、俺が楊貴妃じゃなくても、この花だけは美しいのだと認めてほしい。

「俺じゃなくて、ルハンの方が似合うよ。こんな綺麗な花は」

真っ直ぐな瞳でミンソガが花束を差し出した。
白い包装から花が溢れ出ていた。俺の留めなく募る想いのように。


半年前、一枚の花弁が落ちたように、また一枚の花弁が俺の足元に落ちた。
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