短編集

□赤井秀一と
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「シュウ!優稀来てるわよ」
「なんだと?」
「近くまで来たんですって」
「ここはアメリカだぞ……」

ちょっとばかり変わっているその女は俺がFBIに入って1年目からの恋人だった。
束縛をしない女は初めてで身体から始めた関係だった。いつの間にかこっちが本気になっていていつもあいつの面影をどこかに探している。

「あぁ、いたいた。赤井くん」
「優稀……日本にいるはずのお前が何故ここにいる」

寒そうにマフラーで口元を隠して手を振るものだからから慌てて近寄る。

「うーん、アメリカに来たのは仕事よ?どうせなら赤井くんにあっておこうかなって中央部に来たの」
「仕事って……お前はライターだろう」
「気分転換よ!小説家にも色々あるの!」

あぁ、国外逃亡してきたのかと納得して彼女の腕をつかみ建物を後にする。

「赤井くん、お仕事は?私は勝手に観光してくるし、戻っていいよ?」
「お前1人で歩いたらカモられる。だめだ」
「大丈夫よ。さっき空港で人の良さそうな男性が観光案内してくれるって言ってたし。断ったけど、他にもね……」
すでに目をつけられていたかと頭を抱えた。

「いいか?日本人は他と比べて弱いように見える。実際お前は弱い、絶対に付いていくなよ」
「行かないわよ。だって男の人だったし」
「……」

そういう問題じゃないと言って、通じるだろうか。俺の言葉が足りないか?

「ねぇ、お腹空いた。どこかに行きましょう?」
「どこがいい?」
「分からないから聞いてるんじゃない」
「お前パンフレットは?」
「ないわ。サイフと携帯とパスポート、ノートパソコンで来たから」
「……」
「あっ、もちろん泊めてなんて言わないから安心して?三ヶ月も会わなかったんだもの。彼女さんがいたら大変だわ」
「は?」

彼女…?
彼女はお前じゃないのか?……既に別れたことになっていたのか?
違うはずだ……

「優稀…彼女はお前だろう」
「うん。え?違うの?」
「……」

だめだ、三ヶ月のブランクのせいでまともに会話できる気がしない。

「あー、彼女って言うのはね、私じゃなくて、スターリングさんとか他の女性とか、私がいないときにあなたのお世話してくれる人の事を言ってるの」
「そんなものいない」
「えっ」

どうしてこいつはそういう考えになるのだろう。
普通の女ならどうして他の女といるのだと責め立てるだろうに。
ジョディだってそうだった。

「じゃあ赤井くん何食べてるの?」
「……」
「ジャンクフードだなんて言わないよね?怒るよ……?私に構わず女性作っていいから、ちゃんと食べて、ね?」
「俺は同時に2人愛せるほど……」
「はいはい」
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