短編集
□しあわせは誰かがきっと
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「え」
何気なく言った言葉が失言だったのか隣に座っていた昴は行動を停止した。
なんだ、何を言ってしまったかなと振り返るけれどそんなに固まるようなことを話したかな。
どうしようかと自分さえも固まると彼はやっと動いて私の頬を撫でるように触った。
「優稀さん。それなぜ教えてくれなかったんです」
「なんのこと…でしたっけ昴」
「だから……誕生日の話です」
「あ、ああ…、私はもう人に祝ってもらう年でもないかなって言わなかったの。……三ヶ月も前のことだし……」
「はあ……」
ため息をつかれ居心地が悪くなりとりあえず昴の頭を撫でるといいようにされながらまた口を開いた。
「祝わせてほしい」
「え、でも……、昴は?昴の誕生日を私は知らないのよ?」
「………、忘れてしまいました」
「私だって忘れてたんだから…!」
いいじゃないかと話すけれど彼は納得しない。
まるで息をするように自然に唇にキスをされる。
「では、明日なにか用意しますので」
「えっいいんだって…!大丈夫だから昴」
「僕が、祝いたいんです。彼女のあなたを」
「……、じゃあ昴の誕生日は私が盛大にやるからね!」
「ありがとうございます」