短編集

□沖矢昴と
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接触もあまり望まないのかボディタッチすらもないし、ましてやキスなど正体を明かしてから一度も無い。
こちらに全般の非があるため何も言えないのが実情だった。


「あっ、そうです。沖矢さん、料理のレパートリー増やすんでしたね、私が使ってるアプリとてもいいのでぜひダウンロードしてください」


スマホを弄りだし画面を見せる彼女は一定の距離を保っていた。
近付くとそろりと何気なく彼女は一歩下がるのだ。


「ほー、これは簡単でいいですね。検索してみます」

「煮込み料理は確かにおすそ分けするのに楽な方法かもしれませんけど、逆にオヤツやケーキなんかもいいかもしれませんね。子供たちもよく来るんですし」


全面的に協力してくれる彼女に感謝しかない。しかし俺は。
ぐ、と間を詰めるとびっくりしたのか飛ぶように後ろへ下がるので腰を捕まえて引き寄せた。


「優稀さん……」

「沖矢さん!?」

「優稀さん、傷付けたのは承知の上です。でもこんなに距離が開いてしまうと僕としては悲しい。前も言った通り僕はあなたが好きなんです」

「あ、の…」

「僕を好きにならなくていいです。だから少しだけ『俺』に興味を持ってくれませんか…?」

「……、」

「優稀さん、愛しています」

「や、めてください。たかが利用するだけの女になんでそこまで…っ」

「言ったでしょう?本気になったのだと」

「それでも私はあなたを信用できません」


それはそうかと会話を終わらせて、腰に回した腕を離した。
すぐ様離れる彼女に苦笑してダウンロードしたアプリを開いた。


「赤井さん、とはお友達からでお願いします」

「、おともだち」

「はい。だって、知らない男の人と仲良く出来るわけないでしょう?私は沖矢さんだから好きになったんです。……そんな尻軽に見えますか」

「いや、」

「コナンくんもそうだけど、隠し事している人を易々と信用なんて出来ません」

「……」

「私も隠し事してるし……」

「ホォー…?それはなんだ」

「……、赤井さんには教えません!沖矢さんにも内緒です!教える時が来たらまずあなた方からですからね!」

「分かりました」


(実は最初から赤井秀一だと知っていただなんて言えない……。私が実は……、だなんて。涙を流した答えは私しか知らない秘密だ)
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