短編集

□工藤新一と
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「工藤くん、工藤くん。今日の生物学の課題見せて〜」

「はぁ?またかよ」

「うん」

性懲りも無くそう言うと彼は溜息をつきながらもカバンから用紙を出してくれた。
それをひったくるように取ってぱぱと自分のと見比べほぼ答案用紙のようなそれを返した。

「なんだよ、やってきてたんじゃねぇか」

「だってー、心配だったんだもんー」

棒読みで答える。
ハッキリ言うと彼のことが好きで仕方がなかった。幼稚園から蘭ちゃんと工藤くんとはずっと一緒だった。
蘭ちゃんが工藤くんを好きになった時期よりも前から私は彼のことが好きだったのだけれどどう見ても両想いだったし諦めたのだった。
強奪したいとは思わない。
その瞳が私を移さなくなるまで、想いを持っていくだけだ。

彼に話して欲しくて何度も声をかけるのだ。


2人が楽しそうに話すのを見て私は幾度も切り刻まれる。
それを繋ぎ合わせるのもまた工藤くんなのだった。
幼稚園時代、新ちゃんと呼んでいた私だったが、2人が両想いと分かると工藤くんに呼び方を変えた。
少し不思議そうにした彼はしかし何も言わずにここまで来た。

「工藤くん、明日暇?ちょっと付き合ってほしいんだけど」

「あ、悪い、明日は蘭とトロピカルランド行く約束してんだ」

「あ、そう、いいよ、また暇の時に」


ズキズキ、ズキズキ。
それはまるでとめどないブラックホールのようだ。
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