短編集

□怪盗キッドと
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「……怪盗キッド」
「えっ!?な、ななに言ってんのお姉さん!」
「君も怪盗キッドを見に来たの?」
「はっ、そ、そう!そうなんだよね!」


何故か焦ったように話す少年にまさか家出かと考えるが人様の子供だ。
口出ししない方がいいだろう。


「みんな好きなのね、キッド」
「……お姉さんは好きじゃないの?」
「うーん、分からないなぁ…。あんまり興味が無いの。趣味のひとつもないから、そうゆう欲がないのかも」
「……へえ」
「変な話してごめんね、じゃあ私は帰るね」
「───シンデレラ。今宵、魔法が溶けるまで私と共に世界を見てみませんか」
「は?」
「30分、そこら辺で時間潰しててくんねぇ?すぐに迎えにいくから、帰らないで。ね?待ってて優稀さん」
「え、えぇ、分かったわ」


手首を捕まれぐっと近付かれるとその勢いに負けて頷いてしまった。
貰った花束が花吹雪のように散ると目の前には彼はいなかった。
まるで狐につままれたみたい。
しかし足元を見ると薔薇の花片。
シンデレラという年ではないけれど待つしかないなぁと人だかりがあるより遠くの縁石に座るとぼーっとそれをみていた。




まるで魔法のように現れた怪盗キッドは瞬く間ジュエルを奪い、颯爽と消えたようだった。
警察が行き交う中興味がない私は時間を見て立ち上がった。
30分経ったし帰るかと歩き出すと後ろから肩を掴まれる。


「待っててって言ったでしょ、優稀さん」
「ごめんごめん」


頬を膨らます彼の子供っぽさに笑い、2人で夜道を歩いていく。


「怪盗キッド見た?」
「うーん、ぼーっとしてたから……。でも今回も泥棒したみたいね」
「怪盗ね、怪盗」
「一緒でしょう?人のものをさあ…、まぁ返してるからそうでもないのか……?愉快犯キッドかな」
「……中森警部みたいなこと言うね…」
「え?なに?」
「何でもないよ!」


路地裏まで誘導されながら歩いていくとそこにはおじいさんと車が。
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