短編集
□大人の階段
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次の日社畜よろしく大いに奮闘して癒しを求めて昴に電話しようとするが、いかんいかんとその誘惑を断ち切った。
「あれ、優稀ちゃん彼氏と電話?」
「違いますよ」
「もしこれから用事ないなら会社の飲み会に来ない?」
「飲み会…?」
「会社の株が上がったみたいで社長の奢りだってさ。俺も行くけど、タダだし行く?」
普通なら行かない誘いも疲れた頭では制御し切れなかったのか。
飲んで寂しさを紛らわせたいと思ったのか。
私はその誘いに乗っていた。
何倍もビールを胃袋に入れていく。
ガボガボ飲んではダメだとそこはスマートに、そう、お淑やかに飲んでいたが気づけば本数が分からなくなるほど飲んでいたらしい。
頭で理解は出来るし、気持ち悪くは無いがフラフラになった私は誘ってくれた先輩に凭れながら帰路についた。
飲んでいない人はほぼいない、なので。
居酒屋から少し離れた場所で代行を呼んだり旦那さんを呼んだりしている横で私は昴に何の気なしに電話してしまった。
判断力の低下だった。
「すばるぅ〜〜?」
『…優稀さん?』
「元気〜〜?私は元気だよ〜〜」
怪訝そうな声を出した昴はお酒を飲んでいることに気付いたらしい。
迎えに行くと言われたがそれは頭の片隅にあった冷静な自分が否定をする。
「ん〜ん、先輩と一緒に帰る〜」
『……どこにいるんですか、先輩とは……』
「ほら優稀ちゃん、ちゃんと歩いて。俺の家歩いて行ける距離だから」
『!』
「はい〜」
昴に申し訳ないことをしたかなとふわふわの頭でおやすみと挨拶をするとなにか言っていたがそのまま通話を切った。