短編集
□大人の階段
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「ではまた連絡しますね」
「明日も早いんですか…?優稀さん」
「えぇまあ」
先ほど蜜月を過ごした間柄なのにサバサバとした対応。
ベッドから這い出ると衣服を身に纏いまだ裸の昴の言葉に頷く形で彼を背にして所持品を持った。
甘える女は重たい。
そんな概念が私にはあって、恋人が出来てからも素直に甘えられずにいた。
もちろん、スマートな女性を演じた方がいいと自分は思っている。
付き合った男性は皆、想像通りだと言うしやはりそれが癖になってしまっていた。
それに彼は大学院生で、私は社会人。
歳はあまり変わらないが私の方が上だ。
彼をエスコートする立場にいなければならないのだから。
「お仕事、そんなに忙しいんですね」
「…多忙期ですから」
実はそんなに忙しくはない。
程々だが、ここで昴が放つ大好きオーラを受けていたらまだここに留まっていたくなってしまう。
振り切るようにしかし彼の頬にキスをして微笑んだ。
「またね、昴」
「……分かりました」
彼は名残惜しそうに私の頬を撫で、それ以上は何かを言うことは無かった。
何度見ても趣味の悪いチョーカーを眺めて新しいチョーカーでも買ってやろうと決意した。
やっぱりそのためにはお金は必要だ。だって彼はまだ学生なのだから。