短編集

□Which is liar?
2ページ/5ページ

しかしそれは何度もあった。
ちゃっかりしているのかなんなのか俺が目を離すとすぐだ。
ジェイムズに呼ばれたりボウヤ達に巻き込まれたり会えないとすぐに彼女は「大丈夫よ」と言って姿を消す。
そして俺の見知らぬ男と逢瀬している。
隠すなら全てを隠し通せば良いものをチラリと一部をはためかせて妖艶に笑う。
まるでこちらが気付く瞬間を知っているように、チラリズムで。


「優稀」
「なぁに?」
「また……」


俺じゃない男の所に行ったのか。
そう言おうとして口を閉じると彼女は瞬きをして優しく微笑んだ。


「私は昴に嘘はつかないもの」


いつかも聞いた言葉を繰り返して言った彼女は俺の言わんとしたことが分かったらしい。
俺に寄り添っては唇同士をくっつけてすぐに離した。
淡白な彼女はそれだけで満足だと言うけれどこちらはそうもいかない。
ゆっくりと押し倒せばそれに答えるように首に腕を巻き付け鎖骨にキスをされる。
小さいからと隠したがる胸を丸裸にして自分は何も脱がないまま行為に及んだ。
快感に落とす瞬間が彼女が自分のものだと実感できる。
彼女から零れ落ちる吐息を混ぜた愛の言葉を受けて俺も切に願う。
本気でこちらを向いてくれないだろうか、と。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ