魔女シリーズ

□降谷零に遭う
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やっと生活が安定してきて仕事も選り好みができるようになったので履歴書をちょちょいと魔法で出して警察庁内にある社員食堂の料理スタッフに応募した。
戸籍もなんとかしてーと魔法にお願いしたがどうなっているかは定かではない。
だって私に魔法くれた人めっちゃ適当なんだもん。

しかし通ったので何も言うまい!
何故料理スタッフかというと生活能力がウォッカしかなかったからだ!
いつもウォッカに任せておける訳でもないし、二人にも顔を変える魔法をかけてだけど、働いてほしいと思ったので必然的に私も料理ぐらいしたいなと思った次第。
あと出来ればなんだけどジンやウォッカ以外で生き残ってる組織の組合員がいるか透視したいのと敵情視察?みたいなのを兼ねている。
まあ、私がジンを拾っただけで敵も味方もないんだけどね。


しっかーし!私は警察を甘く見ていた。
ギスギスばっかりしている庁内に魔法なんて使えるわけない。
頭パンクする。
たとえばこの男。ジンを助ける時に見たがやはり優秀らしい。
1回脳内を覗いてみようと思ったが情報量が多く、私の頭のキャパシティーを軽く凌駕してその場で倒れてしまった。
それ以来幹部の脳内を覗く時は休憩時間だけと決めている。
が、顔を見ただけで倒れた私に興味を示されちゃったのか自炊できるくせに昼になると顔を出すようになった。


「やあ」
「こんにちは、降谷さん」
「今日はどうしようかな……」
「昼のランチは油使ったものばっかりなのでランチメニューは避けた方がいいと思いますよー」
「なるほど、考案は君が?」
「私まだ務めて二週間です。皿洗いですよ皿洗い」
「君が作るものが食べてみたいな」
「はあ……、」


無理です。イケメンにそんなこと言われたら後ろにいるおばさま方に刺される。


「私より熟年のおば……、お姉様方の料理の方がもちろんですけど美味しいので」
「そうなの?」
「本っ当に失礼なんですけど、料理のセンスも習いたくてお姉様方に弟子入りしたようなものなので」
「なるほど、でも君ぐらいなら専門学校に行けたんじゃないか?」
「えー、お金が必要だからこうしてるんですよ」
「へえ?」


すみません、仕事やらなきゃいけないんで。とそそくさと逃げる。
自分の番だとでも言いたげに既婚者のおばさんが出てきてはニコニコと笑っている。
いつまでも終わらない皿洗いを再度始めると彼は決まっていたようにランチを頼んで席についた。


「ねえ、本当に王子と関係ないの?」


隣に来たおばさんAは私にそう小さな声で聞くが、周りも聞き耳をたてているように感じたので少し困ったように笑った。
王子とは降谷さんのあだ名だ。


「あんまり話したくないんですけど……、彼氏いるんです」
「え!」
「あまり【私のこと話さないで】くださいね。その彼のために時給が高いのと料理を上達させたくてここに応募したんです」
「健気ねぇ……」


複数人に効くのかは分からないけど魔法を乗せて話す。


「彼働いてないの?」
「残念ながら」
「辞めときなさいよ!そんな男!」
「うーん、そうですね……。考えときます」


少しばかりだがおばさん方と仲良くなれたようでいつもツンケンドンしている人達の対応が柔らかくなったのが分かった。
彼女らの脳内を覗いたところで収穫はないけど家政婦的なドアから見ちゃった的なものもあるかもしれないので一応覗いておくとこれまた知ってる顔があった。
赤井秀一、まだ日本にいたのか。
まあ、ジンが捕まってない以上日本には滞在するんだろうか。
やっぱりテレポートみたいなの頑張るしかないかな。
一応日本は見つかる確率が高いからとウォッカを見つけて治したあとテレポートなるものをしてみたのだが上手くいかない。
私一人ならなんなくブラジルだって行けるけど人を連れるとなると目的が定まらないのだ。
できないことは無いのは証明されたがどう改良すればいいのか分からないので今のところ手詰まりだ。


「ごちそうさま」
「「「「ありがとうございま〜す」」」」
「あざ〜っす」


どうせ聞こえないので奥でそう呟くが視線を感じて顔を上げると降谷さんがこちらを見ていた。
ニコリと微笑んで帰っていったのでやっと場に馴染んだが転職するしかなさそうだ。

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