魔女シリーズ

□若井秀一に遭う
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ふとテレポート出来るんならタイムスリップも出来んじゃね?と思った。
本当突然だった。
とはいえ、タイムスリップしてまで変えたい過去なんて私にはないし、私の場合、時代ではなく世界を跨がなきゃいけないしで無理だろう、いや魔法は万能でしょ、いや万能ではないか。
なんて色々考えながら自分のベッドに横たわった。
魔法使いにも睡眠は必要だ。
空調を完ぺきにした空間はすぐに睡魔を呼び寄せた。
睡"魔"って言うぐらいだから睡魔が魔法説は濃厚だ。


ジリジリと太陽が注ぐような暑さが身を焼く。
えー、空調壊れた?いや魔法で空調してたし壊れたとしたら私じゃん……。
あまりの暑さに寝返りをうつとジャリ、と砂のような感覚がしてやっと瞳を開けるとそこは海だった。
それも人がたくさんいる。裸に近い格好で。
あぁ、夢か。道理で。
もう一度寝ようかと欠伸をすると、たったった、と軽い足音がして少年がこちらを指さした。


「ピエロのお兄さん!この人がきっと犯人だ!!」
「え?」
「───確かに怪しいが……、いや怪しいな」


ふぇぇぇぇ、赤井秀一ならぬ若井秀一がいるぅぅぅ、ってことはこの少年は!!
あの若かりし頃の生意気新一君か!本当だ!生意気ー!
ファン待望のさざ波回だー!!


「だがないだろう。車はガードレールを突き破りそのまま海へ転落したのだから、服が濡れていないと見た現象の辻褄が合わない。……ボウヤ、車が落ちる時人が海ではなく砂の上に放り出されたのを見たかな?」
「み、見てない!でもでも!海水浴場にこんなパジャマみたいな格好で来るかよ!?」


ごもっとも。


「……それについてはお嬢さんに聞くとして……」


あ、これ夢遊病だったっていう言い訳通じるかも……。
私は空を見上げ真上に構える太陽を見て頷く。
これは無理!!昼頃まで寝るとかまじワロタ。不健全かよ!!

そうこう一人で納得しているうちに事件は終息に向かった。
私は海の家の軒下で涼んでいた。
もちろん魔法で身体中に冷気を纏わせて。だって暑いもん。


「……さっきはごめん」


お金がないのでみんなが食べてるのを見ながら空腹を耐えているとすべて終わったらしい新一君はこちらに向かってきてはそう言った。


「うん?君はあの場で一番怪しい格好をしていたから私を選んだんでしょ?犯人ではないけどいい考え方だと思うよ」
「だってお姉さん怪しいし……」
「それな!!自分でも思うよ!でも君と若井……脚長ピエロさんのおかげで無実を証明できたよ、ありがとう。えーっと……、そうそう、まるでホームズのようだね」


子供のあやし方は褒める、限度を覚えさせる、それだけでいい。
ほかの教養は学校や友達や周囲の人を見て学ぶからだ。


「ホームズはもっとすげぇんだ!」
「そうだね、偉大だね」
「だろ!そう思うよな!」
「うんうん。君もいい子だね」


よしよしと頭を撫でてあげると少し恥ずかしそうに手を払うのでちょっと悶えてしまった。
可愛い……、可愛いすぎるぞ新一君。
満更でもない顔が特に。ショタコンだったら持ち帰ってる。


「ボウヤ、すまないが警察への事情聴取を……、あぁ君は……」
「どうもーお兄さんカッコイイですね」
「ありがとう」


うわあ、そう受け取るところがさぁ……さすが若いって感じ。パリピシュウって感じ。


「それはいいけどお兄さんは?」
「用事があってね、それは君に任せるよ。時計の真意を見抜いたのは君だし……」
「そ、そうだけど……」
「なんたって君は、我が国が誇る名探偵の弟子なんだからな……」
「我が国って……、お兄さんイギリス人なの?」
「ああ……今はアメリカ人だが」


ちょっと待って??
今劇的に素晴らしい名場面を見てるのでは???


「それよりこの事件、探偵の修行にはなったのかな?」
「うん!」
「──兄さん、まるでホームズみたいだったからね……」


うわあああ、チュウ吉さんだあああ!
今のうちにサインもらっといて損ない!損ないけど言い出せる雰囲気じゃない!!


「ち、違うよ!ホームズはもっともっと超スゲーんだぞ!!……で、でもまあ……」


来るぞ来るぞ!!ファン待望の掛け合いが!
若井秀一爆笑の例のシーンが!


「ワトソンぐらいにはしといてやるよ……」


上から目線頂きましたぁぁ!!!
かーらーのー??


「フ……、ハッハッハッ!!Dr.ワトソンか!そいつはいい!」


んぎゃわいい!!
そして後ろで目を丸くする真純氏も鬼可愛い。


「じゃあな……ホームズの弟子君」


あ、帰ってしまう、待って!サイン!チュウ吉さんのサインだけは欲しい!!待、


「待って!!!」


………………知っている天井でした。
これはどう解釈すればいいのか、夢か?夢オチか?クソ夢女子が成した世紀なる夢か??そうなるよね!?だって!赤井さん!私を見て!この女呼ばわりだったもんね!初対面ぽかったもんね!
そりゃあそうだ!!
ありがとうございました!!!

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