魔女シリーズ

□江戸川コナンに遭う
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米花町でも探索しよーっと財布と携帯だけ持った身なりで彷徨いていると前から小学生と思しき集団が見えて微笑ましいなと思った瞬間、一番前にいる子供に気付いて路地裏に逃げ込んだ。

いや、あの頃の生意気新一君を見たあとコナン君を見ると本当に大人になったなあと思うし、隠す気ゼロだろって思ってしまう。
過ぎ去るのを待っているといつかも聞いた軽い、たったったと足音がして気付くと目の前にコナン君がいた。
はあはあと息を整えた彼はこちらを見て目を見開くとまるでオバケでもみたような顔をする。


「お、姉さん……、待てそんなはず……」
「?はじめまして、ボウヤ」
「…………」


中腰になって話しかけると後を追ってきた少年たちは私とコナン君を見て首をかしげていた。


「なんだよコナン、急に走り出して」
「事件ですかー?」
「綺麗なお姉さんしかいないよ?」


あら歩美ちゃんいい子。お小遣いあげたい。


「オメーらは帰れ」
「……江戸川君?」
「灰原は……、いや灰原、子供たちを頼んだ」
「えぇ……分かったわ」


ほら行くわよ。えーだってー。コナンだけズルいぞ!灰原さんが言うなら仕方ありませんね……。
そんな声が遠ざかっていって改めてコナン君を見るとこちらを睨んでいた。


「お姉さん、どこかであったことある?」
「んー、ないんじゃないかな」
「姉妹とかいる?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
「僕の、知ってる人にそっくりなんだ……、10年も前の、人に」
「君何歳?」
「ち、違う、僕の知り合いじゃなくてね、新一兄ちゃんの、知ってる人!」
「ふーん」


ガバガバかよ名探偵。


「多分私"君"には会ったことないけど、もしかしたら私の姉かもね。ゆっくりお話でもする?」
「じゃ、じゃあポアロはどう!?」
「ポアロ……、褐色王子様いないならいいよ」
「安室さんのこと……?」
「そ。だってJKに人気なんでしょ?刺されるのやだもん」
「あ、ははは……そうだね、大丈夫!いないよ」


あー、そういえばこの子嘘つきだったな。君に言われたくはないさ……。
目の前にニコニコした褐色王子がエプロン姿で出てきて項垂れる。
コナン君悪い子!ずる賢い!!


「あ、安室さん!知ってる人!?」
「ん?うん。……あなたに会えるとはね。ずっと、逢いたかったんですよ」
「うわあ、遭ってしまったあ……」


どこか緊張した面持ちのコナン君を尻目に嫌な顔をするとより笑みを浮かべた安室といっても語弊はないだろう彼はカウンター席を指さした。


「どうぞ」
「帰りた」
「どうぞ、ね?」
「安室さんの奢りなら」
「いいでしょう。……コナン君はアイスコーヒーだよね?あなたはどうします?」
「甘いの」
「畏まりました」


いやあ、まだポアロにいるとはな……。そして今気づいたけど何故コナン君はコナン君なんだろう……。組織壊滅した、んだよな?
まだ薬ができてないとか?疑問はこちらが多いような気がするよコナン君。


「ね、ねぇお姉さん、お姉さんって海水浴場に行ったことある!?パジャマ、みたいなので」
「なにそれキチガイかよ」


正真正銘キチガイと書いて私と読むやつですね。


「海水浴場ってほぼ裸体な複数人の男女が玉で遊んだり胸を揺らしたり身体中を液体で濡らしたりする場所でしょ」
「お姉さんまだ昼間」
「そこにパジャマで行ったらもうやることやる気満ま……」
「はい、アイスコーヒーとキャラメルラテ」


真っ赤になりながらツッコミを入れたものの俯いたコナン君にセクハラ親父ってこんな気持ちなんだなって思う。そうだね、何故か興奮する、萌える。
尚も続けるとぬっ、と褐色肌が伸びてきて飲み物が置かれた。


「それで?君は何故あの場所にいたの?……一回目で思い出せなかった俺も俺だけど」
「ふぇ?」
「……君が救ってくれた男がいただろう。あいつは今も無事さ」
「へえ、それはよかったですね」
「質問に答える気はないのかな。住所も変わってるし、調べたところ物件を借りたのはあれが一番最初なようだね。なら持ち家があるのかい?そして今も匂いがする、その……」


髪に顔を近づけられすん、と匂いを嗅がれて思わずレッドカードを魔法で出して顔面に押し付けたくなるが我慢する。


「ジンと同じ銘柄の煙草は、君が吸っているのかな?」
「!」


驚いたようにコナン君がこちらを見るのでふわりと笑ってあげると何も答えずキャラメルラテのカップを持ち上げて中に何も変なものが入ってないのを解析して安心すると口をつけた。
まあ、毒が入ってようと自白剤が入ってようとそれぐらいなら魔法で治せるんだけどね。


「なるほど、黙秘か。しかしそれはこちらが人名を出している以上悪手では?」
「そうなんですか?」
「……君は優秀だな。僕に切り札があまりないことを知っている」
「え、これ美味いです降谷さん」
「あぁ、ここでは安室って呼んで」


成り行きを見守っていたコナン君は私の言葉にアイスコーヒーがあることに気付いてストローを咥えて吸っている。可愛い。


「君がもし……、もしジンを匿っているなら教えて欲しい。君は恩人だ、失礼はしたくない。しかし同時に敵ではないかと考えるのが嫌なんだ」
「……」
「やつは裁かれなければならない。この、日本で」
「……知りませんよ。申し訳ありませんが」
「そ、うか……、分かった」


残念そうな困った顔をする安室さんに私は内心冷や汗ものだった。
このあとどうしよ……。
こんな人達に囲まれていて逃げ切れる気がしない……しないよマンマー!!怖いよぉー!!


「さてと帰ります」
「あ、僕送るよ!」
「俺の車で送るよ」
「……えー」


両手に美男子だあ。わーい!……わーい…………。
振り切ることは無理そうなので魔法でここから少し遠くの空き部屋に自宅を繋いで本当の住所が分からないように隠蔽すると念話(とりあえず話が出来る無線的な)をジンに繋ぐ。


《ガサ入れが入るから証拠隠滅して》
《なんだ、お前か……、分かった》
《空気の入れ替えもね》
《あぁ》
《あとは私が何とかする。あなたはいて。顔を変える魔法まだ解けてないよね》
《…………そのようだな》
《りょーかい》


「じゃあ行きましょうか」
「え?いいんですか?」
「えぇ」


次回!「平凡な日常死す!」デュエルスタンバイ!!

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