魔女シリーズ

□灰原哀に逢う
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「あら、奇遇ね」


最近SNSなどで人気な、車で移動する型の露店は値段もそこまで高くはないし美味しいし一から作ってくれるので安心だしと私は好きなのでOLや中高生が並ぶ中、その後ろに並んだ。
わくわくと今日はクレープで苺チョコソースチーズケーキいちごソースアイス生クリーム大盛りを頼もうと待っていると後ろから見知ってる声がして咄嗟に後ろを振り向くとそこには灰原ちゃんがいた。


「…………」


キョロキョロと辺りを見渡すが保護者らしき博士と死神探偵はいないらしい。
ホッと一息ついて相槌を返すと彼女は不敵に笑う。


「いいのよ?」
「……え」
「あなたが週一ここに通っていることをあなたが想像する嫌な人達に教えても」
「な、なんで知って……!」
「私ここの常連なの。あなたと会う日もあったけどあなたが気付いてないだけよ」
「ひえぇぇぇ……」


お待ちの方どうぞー。
そう聞こえて頭を抱えると灰原ちゃんを前に出す。


「二人で……会計一緒です…………」
「まあ。いいのかしら」


この女強かである。




「ここのクレープも融通が利いて美味しいけど私はどちらかと言うとコーヒーとスコーンが好みなの」
「なるほど……」


近くのベンチに座るとOLやお姉さん方はスコーンらしきものと飲み物を持っているのが多かった。
これはホワイトチョコスコーンよ。美味しいわ。
灰原ちゃんはそう続けてスコーンを咀嚼するとブラックコーヒーに口をつけた。


「それで?あなたジンと暮らしてると聞いたわよ」
「暮らしてない……けど……。ごめんね、嫌だったら答えなくていいんだけどそんな疑いがかかってる私と話して不快にならないの?」
「ならないわ。罪を憎んで人を憎まずっていうことわざがあるでしょう。ジンは確かに憎い、あの人は罪かもしれない。それでも一緒にいるだけのあなたまで憎む必要があるかしら。少なくとも私にはあなたは悪い人には見えないし、理由もないわね」
「うっわあ……私より大人なのでは……」
「そうね……。元に戻れれば、並んでいても違和感はなかったかもしれないわね」
「え、てことは……」


灰原ちゃんは仕方がなさそうに肩を竦めるけれどどこか悲しそうだった。


「とはいえ一回は死んでいた命だもの。これから灰原哀として別の人生を歩むのも悪くないわ」
「……」
「あの頃の私を知ってる人はもういないから……。帰っても仕方が無いのよ」
「そんな……」
「長話が過ぎたわね。あなた程じゃないけど私も公安とFBIに監視されているの。そろそろ行かないと」


スコーンを包んでいた紙を綺麗に折り曲げゴミ箱にひらりと捨てるとコーヒーを持つ手とは別の手でこちらに手を振る。


「気をつけなさいね。私の知ってるジンは誰にでも牙を向くような、野生の狼のような男だったから……」
「あ、はい」
「……あなたがその調子なら大丈夫そうね」
「え、あ、ちが、違うよ!?ジンなんて人知らないから」
「分かってるわよ。あなたと私もここで会ってないもの、知るわけがないわ。……またね」
「ま、またね……」


小学一年生には見えない綺麗な後ろ姿の灰原ちゃんは本当に一人で来たのか、見えなくなるまでずっとひとりだった。

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