短編集
□安室透と
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やはり20を超えた女が少年探偵団に所属しているのはおかしいらしい。
「優稀さん……」
「だって楽しいんです。安室さんはあんまり構ってくれないし」
コナン君をぎゅ、と抱きしめながら道端であった安室さんと話す。
コナン君は最初はジタバタしたものの諦めたのか力を抜いた。
「仕事はどうしたんですか」
「気分転換に外に」
「また編集さんから逃げてきたんですか?全く」
「編集って、優稀さん作家さんだったんですか!?」
「オメー無職じゃねえのか」
「歩美知らなかった!」
「お前らな…次本屋行ったら教えてやっから」
「だめだめ、恥ずかしい」
「今の状況の方が恥ずかしいんだけど」
無職だと思われていたらしい。
そりゃそうだろう。昼間からこの子達と遊んでいるのだし。
「……優稀さん、ちょっと」
「なんですか?安室さん」
癒しのコナン君を取られて地面に降ろすと耳を寄せてきた。
「今夜家に帰れそうなんです。待っていてくれますね?」
「えっ、分かりました」
久しぶりだなーだなんて。
忙しいのは分かるけれど何も言ってくれないから聞いてはいけないのだとわかってはいるけど。ポアロと探偵業以外で何をやっているのか、疑問に思う時はある。
「あまり嬉しそうではありませんね?」
少し困ったように言うものだから首をブンブンと振った。
「そっ、そんな、嬉しいです…!私顔に出ないからっ」
「そうなんだぜ、この姉ちゃんさっきもよぉ」
「マシュマロ大好きって言いながら無表情でしたよね…!」
「黙々と食べてたよね。博士に出されたおやつ」
安室さんと会話をしていると一部だけ聞こえたのか乗ってくる小学生諸君に苦笑いする。
「ほんとに好きだよ。マシュマロ」
「じゃあ俺らが嫌なんじゃねーのか!?」
「そうなんですか!?」
「歩美悲しい……」
「君らね……、大好きに決まってるじゃない。だから一緒にいるんでしょ」
「まずその無表情なんとかするんだな」
「そうね、分かってはいても表情ひとつで変わるものよ」
「コナン君、哀ちゃん……」
はい、とコナン君と哀ちゃんに少し傅いて、子供たちの頭を撫でる。
「歩美も大好きだよ!」
「俺も!」
「僕もです!」