短編集

□沖矢昴と2
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「FBIってこんなこともするんですか?」
「いや、しませんよ」


肩を寄り添って歩く2人はきっと周りから見て恋人同士に見えるのだろう。
でもこの人とは先日仲直りしたばかりで距離感が分からず、未だこうやって敬語で話したり、触れ合ったり出来ずにいる。


「優稀さん、もうちょっと近付きませんか?」
「え、あっ」


答えを聞く間もなく腰を抱かれ大学生にしては引き締まっている胸板に押し付けられた。


「っん」
「本当あなたは可愛いですね」


カーッと顔が赤くなっていくのが分かった。
なんで、今、どうして、急に。
混乱していると真上で大丈夫そうだな、と聞こえてやっと理解した。


「まままさか」
「えぇ、彼女がこちらを振り向きそうでしたので視線を逸らしたかったんですよ。……彼女を見すぎです優稀さん」


そりゃあ、家に訪ねて行った途端『外デートしますよ』って引っ張られて離れた先に小さな女の子を見つければすぐ分かる。
あー、確かにデートも込み、かな?みたいな。
そんなこともちゃんと受け入れているから付いてきたけれど、見てしまうじゃないか。
仮だとしても彼女である私を放っておくなんて。
拗ねますよー、沖矢さん。

ニコニコと意地悪な顔をする彼に頬を膨らませて腕の中から抜けて女の子を追う。


「待ってください、優稀さん。可愛いのは本当ですよ。彼女に嫉妬の感情を見せるあなたに」
「………」


さっきよりは近い距離で歩いていくとまた言葉遊びのような台詞が聞こえて首を振る。


「私が?……違います、あなたの片想いですから」
「そうですね、今は」
「まだ許してませんし」
「えぇ」
「今だって少し苛立ちます」
「分かっているつもりです」
「……」
「いくらでも待ちますから」
「待つのは私ですよ」
「そうでしたね」


沖矢さんは微笑むと私の頭を抱え込んで額に柔らかい感覚が。
キス、されたのだと分かって思わず周りを見た。


「こ、こんな往来でっ!」
「誓いのキスでも、と」
「時と場合を考えてください!!」
「では僕とあなたの教会である工藤邸に戻りましたらやり直りましょうね」
「っ!?」

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