短編集

□恋も愛もない
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「うわあ……」


そびえ立つ建物を見上げて心底絶望的な声を出す。
うわあ、とは言ったがいやあ又はうへえ、うげえだったかもしれない。
とにかく人生が終わったのだ。そんな気分。
後ろに構える病院を振り返ってまた正面を向く。
薄っぺらい腹をひと撫でして二人分の価値観を乗せた足を前に踏み出した。

診断を受ける前、もう会いたくないその人物にメッセージを送る。
【一身上の都合で協力者を解任していただきたく思っております。】
カバンに閉まって再度ため息をつく。
あぁ、やってしまった。
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