短編集

□男女の相違性と価値観について
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よし、よし!今日は頑張る頑張って聞く!
彼が一時的に借りているタワーマンションを見上げ拳を握り気合を入れた。





「卒業旅行楽しみだね」
「ま、どこでもいいけど蘭も新一もイギリスがいいんじゃ仕方ないわよね〜」
「ほんとほんと、仕方ないよね〜!だって告白された愛の巣だもんね!」


ポアロで蘭と園子と女子会ついでに旅行の話をしていた。
各々進む道が違うため会えなくなる可能性を考えた上で立てた計画だった。
春休みを利用して行くことに決まっている。
園子にホテルを取ってもらって私は行き来の飛行機の手配、蘭が大体の観光場所を決めてそれぞれ彼氏を連れてくる。
私はまあ……断られてしまったし楽しんでこいとも言われたので仕方ないが秀一さんは参加しない。
一回り以上も離れているので嫌という気持ちは分からないでもないのだけど。
そんなに離れていると知らない園子たちは一歩先ゆく社会人と思っているらしいので尚更だ。


「それにしてもさぁ、仕事休めなかったわけ?おたくの旦那」
「だっ……、う、うーん……仕事休めないのもあると思うけど……多分知らないJKと遊びに行ける感じの人じゃないからさ……」
「JDだったらいいの?」


アッ、アウトー!顔的にも。
違うんだって。


「結構大人だし……、旅行っていったら楽しくじゃん?それを壊したくなかったんだよきっと……」
「ふ〜ん」
「そういう園子は京極さん来れるの?大会とか大丈夫?」
「あ、それ私も心配だった。京極さん大丈夫だって?」


話の流れが変わってひと安心してミルクティーをさりげなく飲み込んで乾いた口内を潤す。


「連絡したけどまだ返ってきてないのよね」
「えっ」
「やばいやつじゃん」
「あ、いや、返信は来てるんだけど、都合が着いたら連絡するって」
「良かった」
「ねー、京極さん向かうとこ敵無しだけど心配になっちゃうよ」


なんだ良かったと背もたれに自重を乗せると安室さんがこっちを向いてることに気づいて笑顔で手を振っておくと彼はキョトンとしてすぐに振り返してくれた。
いい人。
それを見た園子が肩を竦めて私を見る。


「優稀は年上好きだねぇ」
「え」
「あぁ、そういえば一年の時実習生の人に告白してたね」
「そうそう!で、」
「断られましたよ〜無事にね、はー、なんで思い出させるの。結構好きだったんだけどな」
「次は修学旅行の時だったっけ?サラリーマンだったよね」
「あれは告白されたんだったよね」
「そ。付き合って早々ホテルに連れていかれそうになったからすぐ別れた」


次は大学生、次は友達のお兄さん、次は……
同じぐらい告白したしされたけど確かに年上ばっかりだったかもしれない。


「優稀って潔癖だけど男癖酷いって噂があって」
「あったねそんなのも。確か優稀がキス拒んだんだっけ?」
「ビッチ言われてたの懐かしいな」
「懐かしがるもんじゃないでしょ」


潔癖とは違う気がするが大体はそうだった。
好きになるのにキスもそれ以上も身体が拒否した。仕舞いには泣いてしまって相手を困惑させたり激怒されたり。
付き合ってはそれで別れをしているので経験豊富な処女が出来上がり今でもパワーワードだと思っている。AVのタイトルかな?


「本当は年下が好きなんじゃない?」
「それはないかな……コナン君に発情しないし……」
「アンタそれはやめときなさい」
「精通してかr」
「やめときなさい」
「すまぬ」


運ばれてきたケーキに顔を綻ばせ手を合わせてフォークを手に取るとそんな私に園子はため息をついて安室さんに話をふった。


「昼間からする話じゃないと思うんですけど〜、安室さん初体験いつ?」
「……え?」
「ちょっと園子……!」


蘭は園子を口先だけで止めたけれど瞳はギラギラだ。確かに安室さんとか道行く人全員抱いたぜみたいな顔してるもんね。
安室さんはこちらを向いたが私が助け舟を出さずにケーキを頬張ると彼はふう、と一息ついた。


「どうしてだい?」
「今後のためみたいな!」
「まだ高校生だろう……」


あっ、今の言い方秀一さんぽかった。
彼もため息がちに私の行動に口を出す。
お風呂上がりにタオル一枚だったりキャミソールとパンツのみで休みの日過ごしていたりする時に彼はそんな顔をしてそんなことを言う。


「だって、16歳で結婚できるのに高校生で初体験しちゃだめって矛盾してるし、好き同士ならいいんじゃないの?」
「それはどうとも答えづらいね。何してもいいわけじゃないからね」
「……で?」
「忘れちゃったよ」
「えーうそぉ」


私も追い討ちで園子の言葉を繰り返すとぎらりと瞳がこちらを貫くのでへらりととりあえず笑っておく。


「僕はね、結婚したいぐらい好きな人じゃないと嫌だよ。価値観の違いもあるけれど変に焦って初体験をするような事がないように。女性は特に、大事にしなきゃダメだよ園子さん」
「はーい」
「はいじゃあこの話は終わり。結婚してからでも遅くはないよ」
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