短編小説U
□悲劇は突然に
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悲劇は突然だ。
私が寮に帰ってきたら待ってるはずの愛佳がいなかった。そのかわり
「りさぁ〜かまえよ〜」
「…」
愛佳に似た、幼稚園児くらいの変な子供が。
いやちょっと待って。私なんかしたっけ?
昨日は普通に変態で恋人でたらしな18歳の恋人だったはずなんだけど、っていうかこの子が愛佳っていう確証もないしでもこの目元とか花とか超そっくりだし…あーもうなんでこうなってんだよ…
きょとんと私の前で突っ立てるこの子供。
そうだ。この子に聞けばいいじゃん。
「…き、きみはだれですか?」
「え、りさきもーい。けいごとかきもーい。」
はい。決定。こいつ愛佳だ。
少しでも可愛いと思った自分がバカだったんだ。
なんだその顔は。めっちゃバカにしてきてるんだけど。元々子供が苦手な私にとってこういうタイプはもっとだめだ。ほんとむしょーにいらついてくる。
無視しよう。
そう思ってその子(愛佳)が視界に入らないぐらいのとこに視線をあげて部屋の奥に歩き出す。そうすると、ぐいっと引っ張られる。
「おいりさ。おいてくな。」
「…うっざ」
「おふろ入りたいー」
「やだ。」
「いれろ。」
「だめ。黙ってて。」
「むぅー…いいもん。じゃああかねのとこ行くし〜」
あかね、と聞いて今度は私がぐいっと肩を持つ。そうするとすごいどやっとした顔をして愛佳がこっちを向いてきたからがちでいらついたけど、茜のとこにはいかせたくない。
ここは、折れるしかないか。
_______
「おおーいいぞりさぁー」
「くそっ…」
「きもちいなー」
「…可愛い…」
「あー?」
「なんでもない」
「りさぁ〜ごーはーんー」
「はいはい…げっ、カップラーメンしかない。」
「カップでいいぞーまなかカップ好きー」
「っ…」
「おぉ?顔赤くなってるぞ?」
「っるさい…」
「かわいいな〜」
「りさぁ…ねむいぃ…」
「はいはい。おいで?」
「う〜ん…りさぁすきぃ〜」
「う、ん。私も愛佳のこと好きだよ。」
「…」
「…寝たのかよ…」
たった数時間。それなのに今はもうこの愛佳が好きになってしまってたらしい。
ただ、ちょっと。
いつものかっこいい愛佳がいないのは残念だけど。目の前にいる愛佳にそっとキスをして私も目を閉じた。
______
「…んぅ…あ、さ?」
目が覚める。窓から朝日が差し込んできてぐぅーっと背伸びをする。
あれ、なにか忘れてないっけ?
なんかが隣にいた気がするんだけど…
まぁいっか。
「りっさ〜おはよう。」
「…愛佳?」
「昨日は嬉しかったな〜いっつもは言ってくれないくせに?好きとか言ってたし?」
「こっの…!」
「キスとかしてくれたし〜?」
「起きてたのか…!?」
「あははははっ!かーわい〜」
こいつ…!!
やっぱり、子供の方がいいかもしれないと思った。
END.