短編小説U

□生意気な年下
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「ねるねる〜」
「どうかした、愛佳?」
「腕噛ませて。」
「やだ。」
「なんでだよー気持ちよさそうなのに…」
「そうやってずーみんのも噛んで…梨加ちゃんに怒られるよ?」
「ばれなきゃ大丈夫。」
「じゃあ言うから。」
「うわ、ちくりは嫌われるぞ。」
「浮気者もね…」


ホテルに向かうバスの中、運転手側の前から三番目の席。私は愛佳と一緒に座っていた。
ずっとにやにやしてたからなんだろと思ったら雑誌で言ってた腕を噛ませておねだり。ずーみんは噛ませてあげたらしいけど私は無理です。
絶対、無理。


バスの移動中ずっとそんなことを言い続けてきたからとりあえずあとで梨加ちゃんに報告しておくことにしよう。泊まるホテルが見えてきたときには私はもう愛佳のことをガン無視状態で愛佳は途中からのろけ話を語っていた。
もちろんなんて言ってるかは分かんないけど。








「よっと。」



バスから降り早速自分の部屋に直行。だって愛佳に付き合うの疲れたしね。ベッドに腰を落として携帯を確認。愛佳からの変なメール以外特に要件はなかったからそっと閉じた。



そういえばてち、ちょっと打ち合わせあるとか言ってたな。

最年少のくせに大変だな〜と他人事のように思うけど、一応恋人だから心配もする。恋人って前に、大事なメンバーなんだけどね。




…やることないな。
そう思って私はシャワーでも浴びようとお風呂場に向かった。








_____________







がちゃ


シャワーが終わって鏡の前で髪を乾かしていたら聴こえたドアの開く音。扉の方からてちが来たので安心した。


けど



「てちっ!?」
「…」
「ちょ、っと。んぅ!」


がたんっとドライヤーが私の足元に落ちる。電源は咄嗟に消したけど、てちは構わず私にキスしてくる。そのまま後ろのベッドまでいつの間にか押されていて、もちろん私はそのままベッドに倒れて。


「んっ、はぁ…てちやめて…」
「…ねるが悪い。」
「はぁ?…意味、分かんないってばっ、ん」


あがったばかりの火照った身体にてちの手が触れる。てちが触れるとより熱くなって嫌だ。
てちは私が悪いと言ったっきりなにも言わずに無言で触ってくるからちょっと怖い。私はなんで怒ってるのかをちゃんと聞きたいのに、てちの口で塞がれて喋ることを許してくれない。


感覚がしっかりしないなか、太ももの方に微かに感じた感触。


てちの手が、あがってくる。





「っ、て、ちぃ…!」
「…」
「もう、てちってば!」
「っ…!」
「はぁ、はぁ…がっつきすぎ、だってば…」
「…ご、ごめんねる!」
「はぁ…怖いよ、てち。」
「あーほんっとごめん!我を忘れちゃって…」



戻るのは、早いんだね…



「で、なんでこんなことしたの?」
「えーっと、その…」
「はっきり言いなさい。」


さっきとは形勢逆転。ベッドの上でてちを正座させ私と向い合せになる。てちはずっとしたを向いてなかなか話そうとしない。
こういう時は



「…話さないとちゅうするの禁止にする。」
「え!?だめ、無理!それはだめ。」
「じゃあ話して。」
「ずるいんだけど…」
「早く話して。」
「むぅ…なかが…」
「え?」
「だから!」
「…?」
「…ねるが、愛佳に腕噛まれたから…」
「…え?」
「後ろまで聞こえてて…」
「いや。してないから。」
「いいよ隠さなくたって。分かってるし…」
「てち…私本当に噛ませてないんだってば。」
「…嘘。」
「ほんと。」
「本当?」
「うん。」



そしててちはすごいくらいにパァーっと表情を輝かせて私に抱き着いてきた。


やっぱ、こういうとこは年下だな〜って可愛いいと思う。



「あぁ〜もう恥ずかしい…」
「ふふ、てち可愛い。」
「だってさぁ〜めっちゃバスでいちゃついてるから…」
「あー、そうかな?」
「うん。愛佳プレイボーイだからねるにも何するか分かんないし…」
「それは、まぁね…」
「…もう一回ちゃんとしたい。」
「へ?」
「だってもうドキドキ止まんないよ…だめ?」


そんな可愛い顔で言われたら、断れないな〜



「いいよ。てち、おいで?」
「っ…好きだよ、ねる。」
「うん。私も好き。」





生意気だけど、そんな恋人に私もぞっこんなんだよね。


















END.

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