短編小説U

□集中できない
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「ゆいぽ〜ん。」
「…なに?」
「飽きた。」
「早いから…」



私たちは今、私の部屋で勉強会中。
その理由は明後日に控えた定期テスト。もし赤点とったら補修で一緒に帰ったり遊んだりできないからってゆいちゃんが私に「勉強教えて!」って勢いよく頼んできた。
私もゆいちゃんに赤点とってほしくないからいいよって答えたんだけど、勉強会を始めてまだ一時間も経ってない。なんとなく予想はしてたけど、いくらなんでも飽きるのが早すぎだと思う。「飽きた」っていう前からノートを見てはいるけどずっとソワソワしていた。


勉強、したことあるのかな?



「ねぇゆいぽん〜いちゃいちゃしようよー」
「だめでしょ。ゆいちゃんが頼んできたんだよ?」
「それは、そうだけど…」
「じゃあ一緒に頑張ろ、ね?」
「むぅ…じゃあゆいぽん。るーとってなに?」
「そこから…」
「だっていっつも先生言ってるけどるーと分かんないから理解できないんだもん。」
「それはそうだね。先生はルートを分かってる前提で説明してるんだから。」
「この記号のことなのは分かるんだど…」
「…大丈夫かな…」



ルートって確か、中学生で習ったと思うんだけど。
私だって別に特別頭がいいわけじゃない。それでも、ゆいちゃんよりはできるし成績は一応平均以上だし。
ゆいちゃんのために昨日自分なりに色々復習して頑張ったけど、今日はそこまでいく気がしない。多分、基礎中の基礎から教えないと意味がないっぽい。



とりあえず、ルートから教えてあげようと抱えていた頭をあげゆいちゃんを見ると、私の目をじーっと見つめていて私もゆいちゃんの目を見続けていたら、ゆいちゃんの顔が、どんどん近くに…




って




「だめだってば。」
「ちゅーしたいの。」
「勉強してから。」
「やだ。」
「だめ。」
「ゆいぽんのケチー」
「なっ…だめなものはだめ。あと一時間経ったら、いいけど…」
「待てないよ〜」
「待つものじゃないんだけど…」



向かい合わせに座っているゆいちゃんは机に身を乗り出して唇を突き出し近づいてた。私は一瞬そのままそれを受け入れようとしたけどはっと意識が戻ってきたから私の右手でそれを制した。
ゆいちゃんはその私の手の下でなにやらぶーぶーと言ってるみたいだけど、私的にはその喋ってる時の唇が手のひらをくすぐっていてちそっちにばっかり気がいってしまっている。


ならその手、早く離せよ。
頭のなかにいるいつもの私にそう言われた気がしてそれに従おうと手を離しかけたとき。いきなりゆいちゃんがその腕を掴んだ。





そしてゆいちゃんは私の手をまたじーっと見つめ





ぱくっと、指を噛んだ。





ん?







「ゆいちゃん!?」
「ん?なに?」
「いや、なにって…なに噛んでるの…」
「はむ」
「んぅ!」
「ゆいぽん面白〜い」
「ゆい、ちゃん…っ!」




すぐ口から出そうと思ったけど、もしかしたら傷つけちゃうと思ってできなかった。
やめてと言ってもやめてくれなくてひたすら私の指をいやらしく舐めてくるゆいちゃん。私は理性を保って必死に抵抗しているけど、ゆいちゃんは面白そうにしている。



別にいいんじゃない?どーせ勉強なんてしないんだしさ、目の前の誘いにのっちゃえよ。
と、私のなかの悪魔が。


だめだって。ここで耐えなきゃもう勉強できないよ?
こっちは天使が言う。



天使と悪魔の格闘中、結局はゆいちゃんの言葉に影響され





「ゆいぽんの指って甘いんだね。」




可愛く、いたずらっぽく笑う彼女に私はもう我慢できなかった。




「んむ!?」
「ゆいちゃんが悪いんだからね。」
「ん、はぁ…ゆ、い…!」
「私の指好きなんでしょ?だったらいっぱいあげるよ。」
「んっ、はっ…!」



ただ遊ばれてた指を私の意思で動かして、今度はゆいちゃんの口内を遊んであげる。少し強めに舌を押してあげるといやらしく、少し奥に指をやると苦しそうに声をあげるゆいちゃん。


唾液が指にまとわりついてなんかエッチしてるときみたいだな〜なんて思う。
しばらくそのまま口内を犯してたけどそれだけじゃ足りない。
もっと、欲しくなってきた。



「ゆいちゃん。」
「あ、はぁ…ゆいぃ…」
「っ…」




指を抜いて、顔を近づける。
指から垂れた唾液がノートに浸みたのが見えた、その時。




プルルルルルルルッ  プルルルルルルルッ 




「!?」
「で、でんわぁ?」
「ごめん、誰もいないから私でてくる!」
「ゆいぽん!」



リビングから聴こえてきた電話音に行為は遮られ、そのおかげで私の理性も戻ってきたので逃げるように電話を取りにいく。
今日、誰もいなくてよかったような悪かったような…
そんな気持ちで電話に出た。



「もしもし…」
『あ、もしもし。私だけど。』
「ね、ねる?どうかした?」
『…なんか驚きすぎじゃない?』
「そうかな?そんなことないと思うけど…」
『へー…まぁいいや。今日ずーみんと勉強会やってるんでしょ?』
「え、うん。それがどうかした?」
『私とてちもやってるんだけどね、てちが全然集中してくれなくてさ。どうせゆいぽんもそんなところかなって思ったから一緒にどうかなって。』
「あーうんオッケー…ん?」
『あははははっ…やっぱり…』
「ち、違うから!!私の家ね、じゃ!」



平手…
相手はねるだったわけだけど、さすが学年一位。勘はいいわ頭いいわで困ってしまう。
まぁ、ねるが来てくれたらテストもなんとかなりそうだ。



部屋に戻って、ゆいちゃんがいたことに気付く。ゆいちゃんはジト目でこちらを見てくる。
いや、そんな目で見られてもな…



「あー…ねるたちくるって。良かったね。勉強はかどるよ、きっと。」
「…へー。」
「あ。そうだ、ねるたちくるまで休憩しよっか。お菓子食べる?」
「…知らない…」
「え…」




おかしい。私のせいじゃないはずなんだけど…



ゆいちゃんはねるたちが来た後も、私とは口をきいてくれなくて。
結局、そのまま解散になってしまった。








テストの結果はねるのおかげもあってみんな赤点はとらなかった。でもゆいちゃんは怒ったまんまだから、今度しっかり埋め合わせをしないとね。

でもやっぱり、絶対私のせいじゃないと思うんだけど…


















END.

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