短編小説U

□可愛すぎるんです
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「えぇ〜なにこいつらよく喧嘩売ってきたね。」
「愛佳のせいじゃん」
「え、そうだっけ?」
「ていうか傷ついてるし。だっさ。」
「んだとこのやろぉ…」
「あー手汚れたし…きもっ…」



道端で倒れている数人の男女。こういう状態にしたのは紛れもなく私たちのせいなわけだけど、実際にこうなる原因を作ったのは愛佳だ。
二人でプラプラ学校に向かっていたら急に現れたこいつらは、「お前が志田か」と言って殴りかかってきた。愛佳がなにをしたのかというとまぁ世間一般に言うナンパとやらだ。本人はそんなことしてないと言ってるけど、愛佳はプレイボーイだし間違いないだろう。


彼女いるくせに、まったく困ったやつだ。



学校に行く前なのに汚れちゃったよ制服…なーんて会話をしながら私たちは学校に向かった。




_____________




「理佐のばか。なんでまた喧嘩したの?」
「いや、愛佳のせい」「理佐もでしょ!」
「…はい。」
「もう…いっつも心配かけすぎだから…」
「心配してくれたの?」
「へ?…そ、そりゃあね。恋人だし…」
「ありがと。」
「うん…」
「うげぇ…あっまぁ…」
「なっ!?」
「ま、まなか…まだ治療中…」
「うち別になんもしてねーし。」
「したんだよ。」
「してないー」
「はいはい、喧嘩はあとでやって。」



昼休み。ねるたちには隠そうと思ってたんだけどあっけなく見つかってしまい保健室で愛佳は梨加ちゃんに手当てしてもらってる。
別に私はいらなくない?と思ったけど、喧嘩についての説教をすると言われて結局一緒にきた。
心配してくれたねるに嬉しくなったけど、すぐさまやじを飛ばしてきた愛佳に阻まれる。
くそ。おとなしく梨加ちゃんに手当てされてろよこのやろう。



「あ、理佐。」
「ん?…え?」
「ここ、ちょっと掠り傷できてた。」


愛佳とにらみ合ってたらふいにねるに呼ばれてそっちを向くと、顔を近くまで寄せられびっくりした。
でもその傷を確認しただけで特になにもなかったから、ちょっと残念。また愛佳に向き直るとすっごいにやついてたから軽く殴ってやると殴り返してきたから、今度は私と愛佳の喧嘩が始まりそうになってねると梨加ちゃんがまた困った顔をした。



今日の昼休みはもう散々だ。とりあえずしばらくは喧嘩しないように気を付けよう。
愛佳とは本当は一緒にいたくないけど、クラスが同じだからしょうがなく一緒にとぼとぼ教室に向かった。







「愛佳。おい、愛佳起きて。」
「んあ?…理佐?授業は?」
「もう終わったよ…」
「ちょっ、なに急いでんの?」
「いいから。とりあえずこっちきて。」


午後爆睡だった愛佳を起こしてすぐさま廊下に出る。愛佳は準備するのにちょっと時間がかかってくるまで時間がかかった。
あーもう。さっさとしろよと一人イライラ。


「で、なに?」
「あれ見て。」
「あ〜?…なに、屋上?」
「誰かいるでしょ。」
「あーうん。女二人と男子二人?かな。」
「ねると梨加ちゃんね。」
「あー確かに可愛い…え?」
「お前の彼女と私の彼女。」
「はぁ!?なんで男といんだよ!?ざけんな…!」
「だから急いでたわけ。どうする?行く?」
「ったりめーだろうが。なんかしたらぶん殴る。」
「だね。」



そう、私が急いでた理由は、ねるの教室に向かおうと教室を出て、ふいに見えた屋上にいる四人。私、昔から目だけは良くて。なにかの間違いだろうと携帯でそれとなくアップにしてみたらより確証を得ることができた。
本当は一人で行こうと思ったんだけど、梨加ちゃんも見えたから愛佳にも言おうと思い起こしたわけ。


二人全力疾走で廊下を駆け、屋上への階段も駆け上がる。屋上へのドアの前までいき、息を切らしながら二人で耳をつけてそっと耳を澄ます。



微かに聞こえる、誰かの声。



「…なさい…」



ねるだ。



「ちょっと愛佳。なにやってんの。」
「だって、絶対なんかしようとしてるし…!」
「いや、違うでしょ…」


多分これ、告白だ。


「愛佳、私らはとりあえず下で待ってよう。」
「なんでだよー」
「いいから。彼女のこと信用しよう。」
「?…なんのんこと?」




静かに階段を降り、壁に寄りかかって二人を待つ。


しばらくしたら男二人が意味深な顔をして私たちの前を通った。
え、大丈夫だよね?



私たちはすぐさま屋上のドアを開け二人の名前を呼んだ。



「ねる!」
「べり!」
「理佐?」
「まなかっ」
「え、なんでいるの?」
「えっと。見えたから?」
「はぁ?」
「べり!大丈夫?なんもされなかった?」
「うん。だいじょうぶだよ?」
「…ねる。私ってまだ恋人?」
「どうしたの?頭打った?」
「いや。真面目に。」
「理佐しかいないよ?私の恋人は。」
「そう、ですよね。よかった。」
「べりは!?うちしかいないよね、ね?」
「うん。愛佳しかいないよ?」
「うわぁ〜!!可愛い〜!もう信じてた。大好き。」
「もう、苦しいってば…」



嘘つくな。なにが信じてた、だ。待ってる間ずっと「ねぇ理佐。まじで大丈夫かな?ねぇ!」ってめっちゃ心配してたくせに。
愛佳はばっと梨加ちゃんに抱き着き好きだ好きだと連呼してる。まんざらでもなさそうな梨加ちゃん。
なんか、うらやましい。


ちらっとねるを見る。そしたらばちっと目が合って、二人で顔を逸らした。
愛佳たちのせいで、なんかどきどきする。
でもそれよりも羨ましいって気持ちの方があるから、私はねるの手を掴んで少し愛佳たちと距離をおいた。


向き合い、手を広げて、きょとんとしているねるを、ゆっくりと抱きしめた。



「あははっ。理佐面白いね。」
「無理。心臓爆発する。」
「へたれだなぁ〜。愛佳のこと見習えば?」
「あいつはたらしだから、やめとく。」
「そうだね。…今の理佐が好きだよ?」
「っ…私も、今のねる、好き。」
「えへへ。ありがと。」
「うん。」



愛佳たちの方を見ると、めっちゃキスしててまた恥ずかしくなったけど、私たちもまた優しく、触れるだけのキスをした。















END.

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