短編小説U

□戻せない時間
1ページ/2ページ




ゆいちゃんと私は付き合っていた。


ゆいちゃんずとして一緒に活動する時間が増えてから、だんだんと意識するようになってしまって、それが“恋”だと気付くのにそんなに時間はかからなかった。
最初は戸惑った。恋愛禁止っていう前に相手は女の子だし、メンバーだし。ずっと隠し通そうとしてたけど、ある日、まさかゆいちゃんから告白されるとは思ってもいなくて。
もちろん私は、涙しながらその告白を受け入れた。



欅坂46としての活動を終え、私は芸能界から去ることにした。ゆいちゃんは歌の仕事を続けたいと頑張っていた。
私たちは恋人だし、もう卒業したからってことで一緒に住むことになった。適当に安いアパート借りて、私は普通に働いた。
朝は基本私がゆいちゃんを起こす。欅に入ってたから知ってたけど芸能人っていうのは毎日仕事によって起きる時間が異なるから大変。それでもゆいちゃんのために時間を把握してご飯も適当に作ってゆいちゃんを見送る。
昼はそれぞれ仕事中だからメールしたりする。
夜。ゆいちゃんはいつ帰ってくるか分からないから私はとりあえず夕食を作って待っている。早く帰ってくるときは二人で一緒にお風呂も入って、いちゃいちゃしたり。


充実した、幸せな日々。
このまま一生を共に終われたらどれだけ幸せなんだろうか。
いや、きっとそうなるんだろう。





そう思ってた。




「ゆいちゃん…もう、別れよう。」
「…え?なん、で?」
「ごめん。無理なんだよ、元々女の子同士なんてさ…それに、きっと若かったからお互いなんか勘違いしてたんじゃないかな。だから」



別れよう。
別れを告げたとき、ゆいちゃんはなんでと私に問い続けて泣いて私にしがみついた。しばらく経ったあと、ゆいちゃんはそのまま出ていってしまった。
「最低」そう言い残して。


私も一人になり、耐えきれなくなった。
なにが「無理」だ。なにが「勘違い」だ。
溢れてくる涙、これは涙じゃないと言い聞かせながら壁にあたる。



私が別れを告げた理由。
私は全てを共有したいと思ってた。だけどゆいちゃんはそれを拒んだ。
毎日毎日過ごしていくうちに、大好きだったキラキラした笑顔が、どんどんと曇っていくのをずっと連れ添ってきた私が見逃すわけがない。
直接聞いてもきっと答えてくれない。だから私は頑張ってその悩みを遠回しにでも解消してくれればいいなって思ってた。
ゆいちゃんは、一人で抱え込んだ。
そのうち、お互いにすれ違うことが多くなっていった。ゆいちゃんの仕事は忙しくなっていき一緒にいられる時間も減少していき、ほとんど私の一人暮らし状態。
耐えきれるわけないじゃん。一緒にいたいから同棲しようと決めたのに、これじゃなんの意味もない。


久しぶりに帰ってきたその日、別れを告げたんだ。









.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ