短編小説U
□むかしばなし
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私の二人の幼馴染の昔を思い出した。
保育園の頃。あのときから私は二人と一緒にいた。私は今と変わらず力が弱くて体も弱くてだめだめだった。そんな私をよくからかってくる子たちもいた。私は、本当のことを言われてるから別によかったんだけど二人は違ったらしい。
からかいにきた子たちといっつも喧嘩をして、追い払ってくれた。
そうだ、確か五歳のときだったかな。
「おいりか。おまえいっつもあの二人にばっか守ってもらって、ほんとよえーよな。」
「ほんとほんと。おまえひとりじゃなんもできないくせに。」
「…」
たまたま二人がいなくて一人で公園で遊んでいたら、まえに二人に追い払われた男の子たちが寄ってきて、囲まれてしまった。
今考えればいじめだったのかな。私は状況が理解できなくてなんにも言えなくて、そしたら「ほら、なんにもできない」とごもっともなことを言われて、泣いてしまった。
私はいつも二人に守ってもらってばかりで、なんにもできない人。そんな自分がどんどん嫌になっていった。
でも結局、心に思ったのは愛佳と理佐ちゃんで。
まさか、くるなんて思ってもなくて。
「なにべりのこといじめてんだよ!!」
「おめーらただで済むと思うんじゃねーぞ!!」
「まなか、りさちゃん…?」
きてそうそうに男の子たちを蹴り飛ばしていって。
私はそのときもなにもできなかった。
やっと事が収まってきたとき、どこからかこの情報を聞きつけ、大人たちがやってきた。
これが、厄介だった。
大人たちはぼこぼこにされてけがだらけの男の子たちの話ばかりを信じて、愛佳と理佐ちゃんの話は聞いてくれなかった。
愛佳と理佐ちゃんばかりを怒る大人たち。動けなかった私の体が、勝手に動いた。
「…ち、ちがうの…」
「べり…」
「りかちゃん…」
「まなかとりさ、ちゃんは…わたしを、まもってくれたの…!」
結局、それしか言葉が思い浮かばなくて聞き入れてはもらえなかった。
「ごめんね、ごめんね…わたしのせいで…」
「ちげーよ!べりのせいじゃない。」
「そうだよりかちゃん。私たちがもっと早くきてればよかったんだよ…」
「ちがうの。わたし、わたし…二人がいなきゃ、なんにもできない…」
「べり…」
「…」
「わたしは、だめな人なの…」
泣きながら二人にそう言った。
本当のことだから、きっと二人もなにも言えないんだ。そう思った。でも、違った。
「ばっかじゃねーの!」
「!?」
「まなかの言うとおり。」
「べりがいないとうちらはこんな頑張れないの!わかってる!?」
「っ、わか、んない…」
「まなか怖い。そうだよりかちゃん。りかちゃんがいるから、わたしたちはこうやって元気でてるんだよ?」
「そう、なの…?」
「そう。」
「そうにきまってんじゃん!気付かなかったのかよ〜」
二人に頭撫でられて、抱きしめられて。
わたしはまた泣いてしまったんだ。
これが、保育園のころ。
なんだか笑ってしまう。あのころからなんにも変わっていない気がする。
「べり。」
「っ!…なに?」
「いや。なんかぼーっとしてるから。」
「なんか思い出してたとか?」
「…うん。ちょっと。」
そうだった。今一緒に下校途中だった。なんで今思い出したんだろうなって思って周りを見てみると、あのときの公園が。
そっか。だからか。
よく見るとちょうど五歳くらいの子供たちが遊んでて、なんだか重ねて見てしまって、少し、心配になる。
「あいつら、喧嘩しないよね?」
「いやいやいや、私らじゃないんだから。」
「…え?」
「あれ、梨加ちゃん覚えてないかな?」
「うちらもあれぐらいの頃怒られたじゃん。そりゃもうこっぴどく。」
「私たちは悪くないと思うんだけどね。」
「ほんとそれだよな〜今でも腑に落ちない。」
びっくりした。まさか二人も、おんなじこと思ってたなんて。
なんだっけ?こういうこと…あ、以心伝心だったっけ?
二人は公園を見つめて笑いあっていた。
私は、涙がでてきた。
「え!?なんで泣いてんの?」
「梨加ちゃん?」
「ううん。わたしも、昔のこと、思い出して…二人とも、かっこよかったなって…」
「へ?」
「…あ、はぁ…」
「私、二人と一緒でよかったなって。」
二人がいなきゃ生きれなかったかも。
そう言ったら二人は顔を見合わせて、また笑った。
「べりは仕方がないやつだな〜」
「可愛い。」
「え?」
「もう一回いったげる。」
「うん。」
「愛佳、理佐ちゃん…?」
道端で私たちはなにやってるんだろ?
そんなことがふと思い浮かんで、
照れくさくなる。
「梨加ちゃんがいるから。」
「べりがいるから。」
「「頑張れるの。」」
私は二人に、おもいっきり抱き着いた。
END.