短編小説U

□矢印が向かい合う
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「会長、この資料無いんですけど…」
「あーじゃあちょっと探しに行ってきてくれる?」
「はーい。」
「…」
「どうかした?理佐。」
「別に。」


私は、この会長が好きだ。
この学校に入学し、生徒会として活動している菅井ちゃんを見つけたとき、私は一目ぼれしてしまった。きれいなロングの黒髪、すらっとしたスタイル、笑ったときの可愛い顔、きりっとした顔。
その全てに、私はドキドキしてしまう。
だから私は二年生になった今年、生徒会に入った。書記として、菅井ちゃんを支えるため。
菅井ちゃんと、もっと近くにいるため。


「菅井ちゃん。」
「理佐…先輩には敬語を使いなさい。」
「いやだ、めんどくさい。」
「もう…」
「あのさ、菅井ちゃんって好きな人いるの?」
「っ、な、なに急に!?」
「なんだいんのかよ…」
「な、なんで理佐ががっかりしてるの…」
「別に。菅井ちゃんでも恋できるんだって思っただけ。」
「バカにしないで…そ、そういう理佐はどうなの?」


私の好奇心で聞いてみたけど、あまりにも露骨すぎる反応だったからちょっと困る。
もうちょっと私に問い詰められて答えを出させるつもりだったのに。


菅井ちゃんは最後の悪あがきとでもいうように私に同じことを聞いてきた。
「あなたです。」そう言ったら菅井ちゃんはどんな反応をするんだろう。
また、新たな一面を見られるかもしれない。


「…いるよ。」
「ほんと!?」
「うん。」
「誰?」


目を輝かせながら聞いてくる彼女。
自分では隠したくせに私には聞いてくるとか。
彼女らしくて好きだけど。


「ふふ、内緒ですよ。」
「えーもうちょっとで言うと思ったんだけどな〜」
「私をなんだと思ってるんですか?」
「ううん、別に〜」
「でも、ヒントを与えるなら、近い人です。」
「え、そうなの!?ん〜あ、会計の子とか?」
「さぁ〜。どうでしょうね」
「気になるな〜」


ていうか、私も気になるんだけど。


だから私も誰なのと聞こうとしたらさっき資料をとりにいった子たちが戻ってきたからしょうがなく私は自分の仕事をまたやり始めた。



まぁ、菅井ちゃんが好きな人なんてあながち予想がつくんだけど…








______________________




放課後。まだ生徒会の仕事があって生徒会室に向かわなきゃいけないんだけど、ちょっとお手洗いに行こうと寄り道をした。
ちょうどそっちは、菅井ちゃんのクラスである三年生の教室があって。
どうせいないだろうと思ってたんだけど、やっぱり好きだからだろうか。なんとなくそっちが気になってしまって。


でもまさか、いるとは思わなくて。



「あかねんどうしよう…」
「だーかーらー。私はさっきからそう言ってるでしょ。」



一緒にいたのは守屋先輩。
私の中での、菅井ちゃんの好きな人。
なにやら二人で話し合っている。全部は聞こえなくて、二人がいる教室の外で聞いてて分かるのはすごく仲良さげってこと。
そうなると、困っちゃうな。
だって、噂では守屋先輩も菅井ちゃんのこと好きらしいし。
両想いって、ずるくないですか。


でも私、菅井ちゃんだけは譲れない。
いくらあの鬼軍曹でもね。


「先輩。」
「あれ、君確か…」
「り、りさ!?」
「生徒会の仕事もう始まってます。早く行きますよ。」
「え、でもまだ時間…」
「生徒会長が早く行かなくてどうするんですか?」


ちょっといらつきながら、そう答える。


「ねぇ生徒会の後輩でしょ?」
「…そうですけど。」
「あっはは、じゃあ友香のことよろしくね〜」
「…?はぁ…」
「あ、あかねん…!」


先輩から変なエールを受け取り、私は菅井ちゃんの手を引いた。




そのまま生徒会室に向かおうとしたら、急に、菅井ちゃんは足を止めた。



「菅井ちゃん?」
「…あの、さ…」
「どうかしたの?」
「ちょっと、時間ほしいの。」
「…いいよ。」


珍しい菅井ちゃんからのお誘い。
好きな人のお願いを断るわけがない。


菅井ちゃんは無言で生徒会室とは違う方に歩いていき、後ろ姿で「ついてきて」と言われてるようだったから私も後についていった。


連れてこられたのは私の教室。あまりにも予想外だったからびっくりした。
菅井ちゃんはなんだか、落ち着きがない。


「あのね、理佐…」
「うん。」
「…私の、その、好きな人のことなんだけど…」


“好きな人”という言葉を聞き、私の心が跳ね上がる。


「…聞きたい?」
「…うん。聞きたい。」
「じゃあ、理佐の好きな人教えてくれたら教えてあげるよ。」
「…へ?」

意外すぎた菅井ちゃんのいきなりの挑戦に、私はすっとんきょんな声が出てしまった。
え、なにこの人。可愛い。
そんな本音がこみ上げてくる。



この展開って、期待せざるえないよね?



「ふふ、わかった。のってあげるよ。」
「…なんか、私が遊ばれてるみたい…」
「菅井ちゃん。」
「っ…は、い…」
「はい、言って。」
「…え?」
「言ったじゃん今。菅井ちゃんだってば。」
「…え、え?そういうこと?」
「…」
「…理佐?」


この人って、天然だったはず。
これだけじゃわからないのかもしれない。


「…んぅ…!」
「…こういうことだよ、友香。」


私は友香にキスをした。


「り、さ…」
「早く言って。結構恥ずかしい…」
「…理佐ってこういうところもあったんだね…」
「なに?」
「ううん。」


私が今待っている答え。早くほしい。
私はもう一度菅井ちゃんを抱きしめた。








「…わたしも、理佐の、こと…好き、です……」
「うん。私もだよ。」
「…知ってた。」
「やっぱり?」
「ふふ、うん。」






END.

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