短編小説U

□オダナナ日記1
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私は全てを知っている。
知りたいわけじゃなかった。
ただ、みんなが私に言ってくるから。


みんなの馴れ初め…あのころが懐かしい…




ー志田べりー


寮のみんなといると目立つ、愛佳の不思議な行動。いっつもなんかあるたびにぺーたんの隣にいってぎゅーってしたり見つめたり。
あからさまにおかしいから本人に聞いてみると、「え、なんのこと?」とはぐらかされた。
いつもはなんでも話してくれる愛佳がそうなってしまったのは悲しくて、私は少しへこんでしまった。
そんなある日、私は愛しのぺーたんに呼び出された。珍しいからうきうきしながら部屋に向かった。ぺーたんは私に相談ごとがあったらしい。



その内容を聞いて、私は砂糖が出てきそうになった。



「なんかね、まなかのこと見ると胸がぎゅーってして、熱くなっちゃうの。それにね、まなか最近私に、スキンシップが激しくて…すごい、嬉しいんだけど…心臓が爆発しそうになっちゃうし…でも、どうしてこう思うのか分かんないし…みんなとは違う、特別なのはわかるけど…なんでなのかな?」


恋しかないぺーたんは愛佳に恋をしている。
愛佳のことが「好き」と気付いていないぺーたんはいかにもぺーたんらしくてやっぱり大好きだけど、正直、愛佳のこと好きだなとは薄々気づいてたけど…
相手が愛佳なのは、納得がいかない。
いやだってあいつ相当なたらし野郎だし絶対ぺーたんと付き合っても浮気するもん。
そう思いその時は「気にしないで。大丈夫」とだけ伝えて帰ったわけだけどその翌日。


「織田〜聞いて〜どうしようべりが可愛すぎるよ〜!!ねぇねぇ、これって恋だよな?な!?あー好きすぎるよどうしよう…告白、成功すると思う?」


まぁこんなこと言われるのも時間の問題だとは思っていたけど早すぎた。だよねだよねやっぱ両想いだったよねと心底思った。
そして私は諦めた。いや、気持ちを入れ替えた。
志田べりはお似合いだ。うん、間違いなくお似合いなカップルだ。欅のイケメンと美少女だお似合いに決まってる。私がぺーたんを好きだからとか関係ない。愛佳の久しぶりの本気な姿を見て、私は応援しようと決めた。


「愛佳。」
「だに…」
「女の子同士とか恋愛禁止とか関係ない。頑張れよ、愛佳。」
「だに…!!」


そうして私は愛佳の背中を押してあげて、見事に二人の恋のキューピットになったわけです。
ほんと私ってえらい。えらすぎる。
こんなこと言ってなんだけど愛佳の告白が成功したときは私も感極まって泣いてしまった。






あー懐かしい。あの頃が懐かしい。



だからこそ、私はあんなにうぶうぶでらぶらぶなカップルの部屋から変な声やら音は聞きたくなかったわけ。


ぺーたん、頑張って。







ーゆいちゃんずー


私はぽんが大好きだった。
いや、今も大好きだけど…



ぽんは可愛い。いつもはクールで冷たいんだけどたまに優しくてそれがほんっとに、ほら、ツンデレというやつだよ。まぁたまんないわけよね。
ぽん大好きな私が、ぽんの変化に気付かないわけがない。
あるときから、ぽんはおかしくなった。
私が「写真撮って」とお願いすると「うん」と心ない返事ですぐ了承してくれる。違う。こんなのはぽんじゃない。いつもだったら「やだ」と間も置かずに拒否してくれるのに一体どうしたっていうの。
私は心配になった。だから、相談にのってあげることにした。
最初は戸惑ってたけどようやく全てを話してくれた。



「…その、さ…ゆいちゃんって、すごい可愛くて、ちっちゃくて可愛くて歌うまいし可愛いしもうほんと可愛いんだよね…もうわかんない。もうゆいちゃんが可愛すぎて…一緒にいられないよ、どうしよう…もうおだなな助けて…」



そうだねそうだねずーみんは確かにちっちゃいし歌うまいし可愛いよ。うん。でも話してる内容の半分が「ゆいちゃん可愛い」でほんとあの冷静で寡黙なぽんはどこにいったんだろう。
ぽんは打ち明けながら私の目の前で顔を真っ赤にした。私は間違ってしまったのかもしれない、ぽんの育て方を。


「ねぇ、おだなな…」


しかし、ぽん大好きマンの私はこの最後の涙目上目遣いにまんまとやられてしまいまたまた恋の手助けをすることになってしまった。
まぁなんとなく、なんとなく予想はしてたけどね。でもぽんのためなら私頑張っちゃうから。


「ゆいぽん?大好きだよ!」


うん、そうだろう。私はとりあえずずーみんにぽんについて聞いてみることにした。あのずーみんだ。こうなるとは思っていたけど…
ぽんはずーみんに自分から寄っていこうとはしない。ずーみんがうえむーと一緒にいるとそれを一人遠くからジト目眺めている。でもずーみんがふとぽんに気付き手を振るとぽんは顔を真っ赤にして小さく手を振る。





なんだこいつ。
いやいやいやいや、ぽんだよ、あのぽんだから。今のは邪気。私、頑張れ。


「どうしよ織田ゆいちゃんがうえむーにとられちゃう…」


うんうん大丈夫うえむーはずーみんのことそんな目で見てないからね。


「やばいゆいちゃん可愛すぎて死んじゃう…」


死なない死なない。ほんと死なないから。
ってか早く告白したほうがいいよ。


「おだ〜助けて〜…」
「はぁ…」
「溜息!?」
「いいから早く告ってきなさぁーい!!」


まさかこんなにも度胸のないむっつりさんだとは思わなかった。ここでは言うことはできないけどぽんは妄想癖があるらしい。付き合ってもないくせにこうしたらどうなるんだろう?とか白い肌がやばい、えろいとか正直ぽんの口からそういう言葉を聞きたくなかったことがたくさん。


でも今、少し後悔をしている。
あのとき背中を押してしまったことに。



「ゆいちゃんってさ、ほんとに可愛くってさ。」
「…」
「キスしようとするとぎゅって目瞑るんだけどそれ見るとついついいじわるしたくなっちゃうんだよね。だって可愛くって…あーやばい。幸せ。でも手繋ぐのは緊張しちゃう…」
「…へぇ」



知ってしまった。ぽんがむっつりすけべなへたれだと。
知りたくなかった。大好きな人のこんなとこ。


ずーみん、ごめんね。






_____________




そして私は、もっと知りたくなかったことを知ってしまった。



「なんなんだよ愛佳のやつぅ〜なんであんなたらしが梨加ちゃんと付き合ってるのさ〜ねぇおだなな〜もうやだぁ…」


理佐が、ぺーたんに片想いしてること。
しかも、どうやら愛佳よりずっと前から好きだったらしく話を聞けば聞くほど悲しくなってしまう。
ちゃらいやつ、忠実なやつ、ありえないほどの美少女。まるで少女漫画のようなキャスティングに三角関係というシチュエーション。
少女漫画だったら私の好みを押しつけることができるけど、実際に起こってしまうと相当厄介なものでもうどうすればいいかわからない。




私はこれからも、この子たちの世話をしなければならないのかと思うと、先が思いやられる。



はぁ…



苦労はまだまだ終わらなそうだな…








END.

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