短編小説U

□私だけの王子様
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少女漫画とかでよくある展開で、学校の王子様との物語。
その王子様は優しくさわやかな白王子、もしくはSっ気の強い黒王子だったりする。
でもそういうキャスティングの場合、必ずと言っていいほど出てくる、



隠れモテの人。



「ねぇ今小林さんと目あったかも!」
「あの人ってなんか素敵!」
「この前の笑顔はもう凶器レベルだよ!」
「可愛いよねぇ〜!」
「ところでさ、」



あの人って、もう恋人いるのかな?


私の少し前を歩くゆいぽんに、通り過ぎた女の子たちがひそひそと盛り上がっている。
恋人は私です!って堂々と言いたい気持ちは山々だけど、ゆいぽんがあんまりばらさないでって言ってたのを思い出したからやめる。


そう、私の恋人のゆいぽんは表向きはそんなモテてる感じはしないし、とうの本人も(鈍感っていうのもあるかもだけど)モテてることに気付いていないけど、すっごく隠れてモテてるんです。つまり、隠れモテ王子。





でも、ゆいぽんがモテる理由はただ顔が良いってだけじゃない。



「っと、大丈夫?」
「わわ、こ、小林さん!ありがとうございます!」
「ううんいいよ。それより、こんな重いもの女の子一人で持つなんて…早く言ってくれればよかったのに…職員室までかな?」
「小林さん…」


ぜぇったいこれでこの子好きになっちゃったよね、ゆいぽんのことさ!
もう、後ろに私がいるっていうのに…


ゆいぽんはとっても優しい。彼女である私にはもちろんだけど、他の子たちにもすごく優しくて、困っているときは絶対に助けてあげる。
そりゃ、顔もいいんだからみんな好きになるよね…


でも、まだある。


「小林さんって、ミステリアス〜」


よく、そんな言葉を耳にする。
詳しく聞いてみると、ゆいぽんがよく図書室で本を読んでいるとこだったり、動物とたわむれてたり、足速かったり…
でも、肝心の内面はよく分からない。


…そんなところが素敵、らしい。


むぅ…
ゆいぽん、なに勝手にモテてるのさ。




「ゆいぽん!」


そう思い、勝手ながら急に放課後デートという名の説教に呼び出した。
さすがモテるだけあって、彼女はすぐにいいよと返信をくれた。「うれしい」と付け加えて。
だからって、説教をやめようとはおもんないけど。



「ゆいちゃん。嬉しい。意外と久しぶりだね。」
「うん、そうだね。私もうれし〜」
「今日も可愛いね。」
「ん、」

ありがと。そう言おうと思ったけど、ふと思った。
他の子にも、同じこと言ってるんじゃないかなって。
ズキ…そう考えたら胸が痛んだ。
私と付き合ってるけど、それはただの肩書で、実は他の子とも付き合ってたり…


「ゆいちゃん?どうかした?」
「…ゆいぽんは…」
「ん?」
「私以外とも、付き合ってるの?」
「…」


沈黙なんて、求めてないのに。早く、否定してほしいのに。
もしかして、本当に他の彼女が…?
だよね、あんなにモテてるのに、その中で私が選ばれるなんてさ、ありえないよね。
ゆいぽんへの想いは、誰にも負けないつもりだったのに…


「ふふ、あははっ」
「…え?」
「あははははっ!」
「ゆ、ゆいぽん?もう、なに笑って…」
「だって、急に暗い顔したと思ったら、すっごい的外れな質問されたからさ…あはは、ゆいちゃんって、ほんと可愛い。」
「も、もお!私は本気なのにぃ…」
「私も、本気だよ。」

ちゅっ
ゆいぽんが私にキスをした。
んぅ…こういうとこ、ほんとずるいよ…


「ゆいぽん、そういうことするからモテちゃうんだよ?」
「え?私が?冗談でしょ」
「ほんとだよ!」
「へぇ…そうなんだ。知らなかった。」
「…嬉しくないの?」
「ん〜?そりゃ嬉しいけど…」
「けど?うわっ」


ゆいぽんがいきなり、私を抱きしめた。


「ゆいちゃんに好かれる方が、何倍も嬉しいな。」
「ゆいぽん…!」


まったく、ゆいぽんって、私を照れさせるのほんと上手だなぁ。
こーゆーとこが、モテる要因なんだよ。


「じゃあゆいぽん。お願いしてもいい?」
「なんでもいいよ。ゆいちゃんのお願いだったら。」
「うん。ゆいぽん、モテてもいいけどね…」


私だけの、王子様でいてね。





END

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