短編小説U
□初めてのキス
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「前から薄々気づいてたんだけどさ」
「…」
「理佐って、やばいヘタレだよね。」
ふざけんな。
いつもだったらそう返して終わるはずだけど、今はそうもいかない。
なぜなら、ほんっとに認めたくないけど、認めたくないけど…
否定はできないから。
「いや、一応聞くけどさ…付き合ってどんくらいだっけ?」
「一か月と五日。」
「んで、キスはした?」
「してないできない。」
「手はつないだ?」
「いやいや触れたことぐらいならさすがに…」
「ぺー。どう思う?彼女として。」
「ちょっと…さみしい?」
「うっ…梨加ちゃんに言われたら悲しい…」
「ってことで、ちゃんとねるの気持ち考えろよヘタレ。」
本当にイライラするけど今回ばかりは仕方がない。
愛佳が「緊急事態」とか言うからいつもは既読無視するんだけど急いで部屋に駆け込んでいくと、いつものチャラい雰囲気じゃなくて、呆れた親のような顔をした愛佳と、絶対に緊急的じゃない顔をした梨加ちゃんが待っていた。
新手のからかいかと思ったけど、恐る恐る二人の前まで行くと「座れ」と言われた。
そして、座った瞬間に言われた言葉が「お前はバカなのか?」だった。
は?って思ったよね。でも、その内容は、なにやらねるが愛佳たちに相談したことのようで、私がへたれすぎる、っていうことだった。
まさか、彼女にまでそう思われてるとは。
私だって今の状況に満足しているわけじゃない。
手だって繋ぎたいしチューだってしたいしその先までだって…
試したことは何度かあった。
頭の中で何度もシミュレーションを繰り返し、そのシミュレーション通りに「ねる」とかっこいい感じで声をかけた。
つもりだったのに、ねるはいつだって「理、理佐…なにその声?どうしたの?」って笑ってくるんだ。
そこで、私の心は沈下して、結局なにもできずしまい。
あれ?よく考えたらねるのせいなんじゃないかな?
って、こんなこと愛佳たちに言っても怒られるだけだよね…
でもじゃあどうすれば…
「ってことで、うちとべりから二人へ、少し早めの誕生日プレゼントをあげます。」
「…誕生日まだまだ先だけど…」
「うちとべりが一生懸命考えたんだよ?なのに受け取らないわけ?」
「…なにをくれんの?」
「ジャジャ〜ン!」
え、これって…
「遊園地のペアチケットです!!」
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