短編小説V

□ずっと隣にいて欲しい
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端的に言うと、私は好きな人に振られてしまった。叶うなんては思っていなかったっていうのもあるのか、私は驚く程に落ち込むことがなく、驚く程にその気持ちを諦めていなかった。


好きになったのは一緒に活動している今泉佑唯。私は他のメンバーよりもこの子との活動が多く、特別な関係であるのは間違いない。だけど、その“特別”という感情には明らかに差があり、絶対に踏み込んではいけないその“特別”の領域に私は足を踏み入れてしまったのだ。
いつから好きになったのかと言われるとそれも思いだせない。いつから告白しようと思ったのかと言われてもわからない。それくらい彼女は、私の気持ちを簡単に動かしてしまう存在なんだ。


まぁ、振られてしまったわけだけど。


何があったのかはさっぱり自分でも分からないけど、急に告白しようと思い立った私は彼女と遊ぶ約束をして、そして遊んだ記憶なんてもう吹っ飛ぶくらい緊張しながら帰り際に言った。「付き合ってほしい」と。そして「ごめん」と。二文で終わったこのやり取りはなんともあっけなく、その時の彼女の顔だって覚えていないし気づいたらもう家だったから。


そしてこれら一連の出来事は約一週間前、たった一週間前の出来事なのに、運命というのは意地悪で今日のホテルの同室は私を振った今泉佑唯だった。







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