短編小説U

□心の底にある想い。
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あの日から、私はゆいちゃんのことを見るとついどきってしてしまうようになった。



ゆいちゃんずとしての活動も増えてきて、ゆいちゃんと一緒にいることが多くなった。
それに喜びを感じる私は、いたって普通なはずだ。



「由依ってさ、ずーみんのこと大好きだよね。」
「っな!?はい?なに言ってんの…」
「いやなに焦ってんの…」
「…なんでも。」
「だって最近ずっと一緒にいるしさ、なんか由依のずーみんを見る目が他と違うし…」
「まじ?」
「…え?もしかしてまじ」
「ちがっ、そうじゃない…!」
「なんか顔赤いし」
「…」


いや、普通じゃないかもしれない。
おだななに話しかけられなぜか焦ってしまう。
でも織田だったら、この気持ちの正体が分かるんじゃないかな…?


そう思って私は、ゆいちゃんに対する思いを打ち明けることにした。



「織田さ、聞いてほしいんだけど…」
「お、いいぞー。お母さんが聞いてあげるよ。」
「…私さ、ゆいちゃんと一緒にいれると嬉しいんだ。ゆいちゃんが他のメンバーといると、胸がなんか、ぎゅーってするし、苦しいし…」
「ほうほう」
「ゆいちゃんのこと、すごい好きだと思うんだけど…」
「うんうん。」
「これって、普通だよね?」
「うんうん…うん?」
「やっぱり。良かった…」
「いや待って。」
「なに?もうなにもないけど…」
「今、ずーみんのことなんて言った?」
「え、好き?」
「そうそれ。」
「…え、」
「お。」
「私って、ゆいちゃんのこと好きだったの…?」
「そうだね。それも重度の」


恋だね。



恋、とは。
普通だったら異性に抱く感情だよね。でも私のその、好きな人、は女の子なわけで…
それを言ったら織田は好きになったらそんなの関係ないとかって私を怒ってきた。さすがお母さん、いいこと言う。


ってそうじゃない。



私って、恋してるの?ゆいちゃんに?







「ゆいぽ〜ん。練習しよ?」
「あ、うん。」
「どうかした?顔くらいけど…」
「なんでもないよ。しよっか、練習。」
「…うん!」


ゆいちゃんのことが私は好き。そう思ったら急に意識してしまって、妙に緊張する。
あぁもう。こんなんじゃだめなんだって。
やけになってギターを弾く。手に汗がにじんでてうまく弾けないけど今はそれでいい。
とりあえずなにかしてないと、心臓がもたない。


しばらくは二人であのときのように別々で弾いていた。でもゆいちゃんがまた教えてほしいって言ってきたからもちろんいいよって答えてまたそばに寄った。


どきどきどきどき…


うるさいな。ゆいちゃんに聞こえちゃうよ。


ばくばくばくばく…


なにおっきくなってんだよ。止まれよ。



ゆいちゃんの後ろに回って、ゆいちゃんの手の上から私の手を重ねて、一緒にやってみる。


前までだったらまだ、大丈夫だったのに。


「ゆいぽん」と私の名前を呼んで振り返ったゆいちゃんに



私はもう、なにかが壊れてしまって



元々近かった私とゆいちゃんの距離を、ゼロにした。



「ゆい、ぽん…」
「…あれ、私なにして…」
「今…」


なにやらゆいちゃんの目がすぐそこに見えて、唇を手で触っているゆいちゃんを見て、この状況に頭が追いついてくる。


私は今ゆいちゃんに、キスした________?




「っ!!」
「ゆいぽん!」



なにやってんのなにやってんの…
ばかだ。私めっちゃバカだ。


急いで練習室を飛び出して雑に靴を履いて雪の中を走り出す。


もう嫌われた。絶対嫌われた。


ゆいちゃんと会えないよ、無理だ…


行く先は分からない。それでも私は、走ることしかできなかった。

















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