短編小説U

□カメラレンズのその先は
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高校生になって、私はお母さんの元を離れた。


誕生日プレゼントは中学生のときにもう全部もらってしまったから、これ以上この人と一緒にいる必要はないと判断したから。


ていうか、早く離れたかったから。



高校生になってバイトも始められた。
バイト代は一人暮らしのための生活費と、カメラのために使った。


私からみえる世界は相変わらずモノクロで、カメラを通さないと輝きはもたない。
だから私は学校でも友達なんていなかった。でも別にかまわない。私にはカメラがなければ、この世界はなんにも変わらないから。



「…よし。」



そんな私の日課は公園にカメラを持っていきたくさんの写真を撮ること。
輝いた、世界を見ること。








この世界は、カメラを通さなければ輝かない。
それ以外はモノクロで霞んでいるつまらない世界。
彩のない世界。



そう思ってた。







“彼女”と会うまでは。






カメラレンズのその先に映ったのは


とてもきれいな後ろ姿で


ただでさえ輝いている思ってたその世界は


また違った輝きを放ち


振り返ったその人のことを見て




私は咄嗟に、カメラを顔の前からとった。



ごくっ…

思わず息を呑む。
だって、どうしてか、霞んだ世界のなか彼女だけは輝いてるもんだから、新しい発見に私は戸惑う。



同時に、私は彼女にこの一瞬で全てを奪われたんだと思う。




「あの!」
「…わたし?」
「は、はい!あ、あの」
「あなた」
「はい?」
「あなた、いつもこの公園でカメラ、もってる人?」
「た…多分。」
「わぁ〜ほんとに?私、あなたのことずっと気になってたんだぁ。お名前、聞いてもいいかな?」
「…愛佳。志田、愛佳。」
「まなか…」
「あ、あなたは?」
「私?私は…」






“渡辺梨加だよ”




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