短編小説U

□もう何度目かの告白
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どうすればもっと可愛くなれるんだろ?
授業中、そんなことばっかり考える。
あぁでも、可愛くなるばっかりじゃ意味ないな。だって、その人の好みじゃなきゃいけない。
たとえば、乃木坂46の白石さんは、誰もが認める美しい人だけど、みんなが白石さんのことを好き、といわけじゃないから。
となると、白石さんほど可愛くない私には、好みの人になるなんてもっと難しいことじゃん。


「鈴本!」
「はいっ!?」
「お前…授業中だっていうのに外ばっか見て…」
「すす、すいません!!」
「赤点とったら…わかってるな?」
「は、はい…」


先生の怒声で我にかえり黒板を見ると、そこには意味のわからない計算式がずらぁーっと並んでいた。
しまった。
これは、赤点回避が難しいかもしれない。






「みゆちゃんまぁーた意識が変なとこいってたね。」
「なんで笑顔なのよ…」


授業終了のチャイムが鳴り終わり、とことこと私に駆け寄ってきたのは今泉。
今泉はまぁ、いわゆる親友、と言ってもいい間柄だと思う。


「だって、どーせ織田君のことでしょ?」
「うん。」
「ほらね。顔から織田くん〜!っていう感じが溢れてたよ。」
「…今泉私より前の席だよね…」
「へっ!?あ、あはは…」


まぁなにがあっても、こいつより点数を落とすことはまずないから安心だ。赤点とっても今泉がいるっていう保険あるし。まぁいっか。


「織田君に教えてもらえば?」
「っ…え?」
「だってさ、幼馴染だよね、一応。」
「…」
「もうみゆちゃん何回告白したか数えきれなくなってきたよね〜。そういえば、最近はしてないね?なんかあったの?」


そう、織田は、私の好きな人は幼馴染。
だからきっと、私を異性として見れないんだろう。昔からずっと一緒で、誰よりも織田と仲が良かったから。
今泉が言った通り、私はもう何度も告白した。






初めての告白は、確か小学生のときだった。
少女漫画を手本にして、織田の下駄箱に「放課後○時に教室にきて」てきなことを書いて、織田を教室で待っていた。織田は教室にきた途端、「あれ?鈴本も呼ばれたの?」と的外れなことを言ってのんきにしてた。あまりにものんきだったから、一瞬告白する気が引いたけど、チャンスは今しかないと思って、織田の名前を呼んで、


『私…織田のこと好きなの!』

と、ありきたりな告白を、まぁ小学生でよくはっきり言えたもんだと思う。
でも返事は

『ごめん。俺まだ小学生。』

っていう意味のわからないものだった。
あのときは泣いたなぁ。初めての告白でふられてしかも返事が曖昧なやつでさ…


でも、私の恋心は沈むことなく募るばかりで、中学二年のとき、かな。もう一度、告白する決心をした。

『織田。ちょっときて。』
『んー?なに鈴本。あ、もしかしてまた告白?』
『えぇ!?』
『え、まさか図星?』
『う、うっさい!好きだよばーか!』
『わっるいな。俺、鈴本のこと恋愛対象として見れないんだわ。』
『な、なんでよ…』
『ほんとごめん。んじゃ、部活あるから!じゃな。』

多分織田にはなんの悪気もない。
でもここからだった。私の心に火がついたのは。

『織田!』
『なにー?』
『付き合って!』
『ごめんむりー』

『織田好きだー!』
『あははー俺もー』
『え!?』
『友達としなー』

こんなやりとりを、もう何回も繰り返した。
こんなにも言ってるのに、顔を赤らめることもない織田って、一体なんなんだって思う。
でも、もしも返事がこれだけだったら、私は今もまだ告白し続けていた。
それが終わった理由は…










「織田くん、ゆいぽんのこと好きだもんね〜」


織田に、小林由依っていう好きな人ができたから。


「あっ、今度ゆいぽんに勉強教えてもらお〜」
「…頭いいの?あの子。」
「私よりはいいよ!でも、勉強できるからっていうよりは、私ゆいぽんのこと好きだからね〜」
「…あー、幼馴染だっけ?あんたたち。」
「えへへ。織田君がゆいぽんを好きになるのもしょうがないよ〜。幼馴染、兼婚約者の私が言うんだから間違いない!」
「どんだけ仲いいんだよ…」
「みゆちゃんには言われたくない!」
「はぁ?」
「あと、本当のことだし。」
「…え?」
「ん!そろそろ次の授業だね〜座らないと!」
「ちょっ、今泉っ…」


本当のことって一体どういうこと?
今泉の顔、めっちゃマジだった。

まぁそれはおいといて…
また、教室の外を見て考える。織田が私に「好きな人ができたからごめん」と言ったときは、さすがに傷ついたなぁ。それよりだったら、何度も断られる方がましだった、って気付いた。
小林さんのことを見たときは、ほんと、敵わないって思っちゃった。さすがにもう、私の初恋も終わりかなって。


でも、私は思うんだ。
正直、織田ってそんなかっこよくないしちょっと変だし幼馴染の私でも苦労してるんだ。そんな奴、私以外に好きになる子なんてそうそういないし。
まぁちょぉ〜っとだけならいるけど、付き合ったら絶対すぐ別れると思う。
これはただの自己満足。
だけど、大きな自信だから。


だから…


私は最後に、もう一回だけ、想いを伝えようと思う。


本当に、最後。


先生の私の名前を呼んだ怒声に、私は決心への想いを込めて返事をした。






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