短編小説U

□もう何度目かの告白
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「織田。」
「ん?お、鈴本じゃん」
「今日さ、一緒に帰れる?」
「おっけー。ちょっと部活のミーティングあるから10分くらい待ってもらってもいい?」
「うん。」


織田と話すのは日常茶飯事。
少し前まではそれに告白も付け加わってたけど。
最後なら、正々堂々と。
今泉も「ゆいぽんよりみゆちゃんの方が似合う」と背中を押してくれた。その言葉の中に若干の違和感があったことは気にしないでおこう。

スー…ハー…

鼓動が、早まるのを感じる。


生徒玄関で座って待っていると、後ろから私の名前が呼ばれる。
10分って、こんなに早かったっけ?







「鈴本と帰るのって、何気久しぶりだもんな〜」
「そうだね。モテない織田が女子と一緒に帰れるなんて希少だよ?ありがたく思って。」
「え、ひどくない?本当のことだからまじで傷ついたよ?」
「あははっ。知ってた知ってた。」
「おめーだってモテねーじゃんか。」
「あ?」
「こっわ。」
「別にモテなくても結構ですから。」

織田に好きになってもらえるなら、それだけでいい。
他愛もない話をして、私は告白へ気持ちの整理をする。多分織田は私の緊張感に気付いていない。私、結構隠すの上手なんだよね〜、女優なんて向いてるかもしれない。
ドキ、ドキ、ドキ…
家が見えてくる。「運動しなきゃな〜」とか言いながら、遠回りになる私の家まで送ってくれるのは、昔から変わらない。
こういうところが、好きだ。


ドキドキドキ…


「よし、じゃあな鈴本」
「まって。」
「…?」
「言いたいこと、ある。」


これで、最後なんだ。
キョトンとしている織田に、私は続ける。


「織田に好きな人がいるって分かって、私は、ほんとに悲しかった。悲しいっていうか、その、もうあきらめようって…」
「…」
「でも、ほんと認めたくなかったんだけど、びっくりするぐらい織田しか好きになれなくて。」
「鈴本…」

頬に何かが伝うけど、私は止めない。
ここで止まったら、もう言えなさそうだったから。

「何度断られても、好きな人ができたとしても…私は、織田が好き。」
「…」
「織田が、好きなの。」



無言は肯定?それとも否定?
私は流れてくるなにかを見せたくなくて、ううん、返事をききたくなくて、ずっと下を向いてた。
織田は、そんな私を待ってくれていた。
ちょっと顔を上げたとき、織田は私のことをしっかりと見つめていて。多分、私がずっと下を向いてても、織田は私から視線を外さないんだろう。
それが織田だって、私は知っている。
だから私も、顔をあげなきゃいけない。
織田の返事をきくために。


「鈴本。」


優しい声が聞こえる。
それに誘われるように、私は自然に顔をあげることができた。


「…」
「…」


しばらく見つめあう。
私が口を開く前に、織田が口を開いた。







「…じゃな、鈴本。」






そう言う前に


織田は言った。


告白の返事を。





三文字で、簡潔に。









END
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