短編小説U

□初めてのキス
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「…あと5分くらいかなぁ…」


理佐に指定された待ち合わせ場所で、私はベンチに腰掛け携帯をいじりながら時間を確認していた。時間通りなら、理佐はあと5分でつくけど、正直、この状況は珍しい。
いつもなら大概理佐の方が早い。一度、理佐より早くこようと1時間前に行ったんだけど…まさか、もう理佐がいるとは思わなかった。
ヘタレなのに、そういうところは紳士でかっこいいなって思う。あ、でもある意味忠犬感もあって可愛い。


でもさすがに、私ももっと先に進みたいって思ってる。


今日は唐突のデートだったから理佐からお誘いをもらったときはびっくりしたけど、多分、愛佳たちがなんかしたんだろうな〜。


なんて考えて、もう一度時間を確認すると、ちょうど1分前だった。
もしかして理佐、初めての遅刻かな?
それもそれでおもしろいなぁ〜って思ったけど、彼女が遅れるわけがないのは知ってた。


「ねる!」
「おはよ〜理佐。」
「ご、ごめん…遅くなって…」
「だいじょぶだよ?私も今きたところだし。」
「嘘。」
「んっ。」
「…ほら、冷たいじゃん。」
「…」
「ねる?どうかした?」
「いや…」


びっくりした。急に私のほっぺに手を当ててきたから…
理佐は私がなんで驚いているのか不思議そうにしてたけど、これができるのになんで手も繋げないのかな?
謎が深まる。


「あ、それで今日はどこ行くの?」
「んっと…ここ。」
「…遊園地?」
「…」


理佐は、なぜか恥ずかしそうに小さく頷いた。





_________




「ここ、くるの初めて…」
「私も初めて…」
「そのチケットはどうしたの?」
「あぁ、愛佳と梨加ちゃんが少し早めの誕プレって。」
「少しじゃ…ないよね。」
「ね。」


二人で苦笑する。
あのカップルは似てないようでどこか似てる…
そんな気がした。


「あ、ねる。」
「ん?」
「その、さっき言い忘れたんだけど…」
「うん。」
「今日の服、可愛い。」
「…ありがと…」
「う、うん。」


今のはさすがに、理佐の方が可愛かったけどなぁ。
愛佳、理佐になんか言ったのかな?
今日の理佐は、少し違うっぽい。



「いこ?」
「え?」
「ひ、人多くなるし…離れたら、大変。」
「…」
「は、はやくねる。」
「ご、ごめんっ。…ありがと。」
「んっ。」


手を差し出してきた理佐。
手汗大丈夫かな?って確認してから、せかす理佐の手に、そっと私の手を重ねると、理佐はぎゅって握って、私を優しく引っ張った。

耳、真っ赤になってる。

理佐にとっては今日が、頑張る日なのかな?って思った。







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