短編小説U

□初めてのキス
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手、湿ってないよね…?
そんなことを気にしながらねると手を繋いでいる。
たくさんのアトラクションがあって、でもどっちも行ったことないから、先に何があるか見て回ろうって言ったのはねる。
その間、ずっと手握ってたから、私の心臓はバクバクだった。

とりあえず一周した後、ねるがジェットコースターに乗りたいって言うから、ほんとは乗りたくないんだけど、しょうがなく乗ってあげた。
ねると離れる方が、よっぽど嫌だったから。

結構酔って、ねるに休憩したいって言ったら、ねるは私を置いてどこかへ行ってしまった。
なにしに行ったのか気になったけど、頭がぐらぐらしてたからおとなしく待ってると、ねるが申し訳なさそうな顔で「ごめんね」と言って、水をくれた。

「無理しなくてもよかったのに…」
「ん…ごめん…」
「謝んないで?理佐が悪いわけじゃなかと。」
「でも…」
「理佐。」
「ご、ごめん。水、ありがと。」
「うん。じゃあ、今休憩するかわりに、あとでまた手繋いでね?」
「…え?」
「一回しか言わない。」

もちろん聴こえなかったわけじゃないけど、あまりにも嬉しくて、今にもにやけ始めそうだったから、私はねるの手をとりすぐに歩き始めた。「次はどうする?」って聞きながら。
少しでも長く、手を繋いでいたかったから。











「っはぁー、結構時間経ったね。」
「うん。そろそろだね。」


最初は緊張ばっかしてたけど、途中からは手を繋いでることが心地よくて、あぁ、今ふれあってるんだって感じがして、嬉しかった。
でも、そう思ってしまうと時間はあっという間に過ぎてしまう。


「りさ。」
「ん?」
「あれ、最後に乗ろう。」
「…そうだね。いこっか。」
「うん。」


最後はやっぱり、観覧車か。
今日一番に頑張らなきゃいけない大一番。
手を繋ぐことには慣れたけど、その次が、一番大切だし…
その気を紛らわせるように、私はねるの手を引き観覧車へ向かった。






_____________





「…」
「…」


観覧車。思ってみるとあんまりのったことがない。だから、どういう風に座ればいいのかも分かんなくて、わたしたちはおどおどしながら向い合せに座った。
…失敗だった。前を見るとねるがいて、どこか改まったようで、変に緊張する。
それはねるも同じで、目が合うと自然に二人で目をそらしてしまう。


「理佐。」
「っ?」
「手、繋ぎたい。」


ねるの願いに応える。差し出された手を、掴んであげる。
手を繋いだせいか、二人の距離が縮まる。


ドキ、ドキ、ドキ…


胸の鼓動が早まる。


「あの、さ…」
「なに?」
「今日楽しかった?」
「もちろん。すっごい楽しかったよ。」
「良かった…ほっとした。」
「…理佐と一緒なら、どこにいっても楽しい。」
「…ねる…」
「理佐は?」
「っ私、も。」
「…」
「…」



二人で見つめあう。恥ずかしいけど、視線を外したら、いけない気がして…


「りさ。」
「ねる…」
「りさから、して、ほしい…」
「っ…」
「だめ?」
「…ううん。…じゃあ、目、閉じて…」
「ん…」


目を閉じたねる。すっごい、可愛い。
体が強張るのを感じる。




私たちが乗っているところは、あと数秒で頂点まであがる。


それを見計らって、


私は彼女に、初めてのキスをした。









END
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