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□恋人っぽくなりたい
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「ねぇ、麗」
「なにー?」
「手、繋いでも、いいかな?」
「ん、いいよ〜」
麗と付き合い始めてそろそろ二週間が経とうとしていた。私たちはまだ、手を繋ぐことくらいしかしてない。しかも、いつも私からで、麗から言ってくれる雰囲気すら感じない。
…ううん、本当は私がただ繋ぎたくて仕方ないだけなんだけど。
それでもやっぱり私だけが求めっぱなしだと、不安になる。麗は別に、「恋人」になりたかったわけじゃないのかな、って。
なんで、どうして、麗なんかを好きになったのかな。そんなアホみたいな思いまで出てきちゃうし…
「はぁ」
「どうしたのるーりー、幸せ逃げるよ?」
「別に、なんでもないし」
「困った彼女だな〜言ってくれなきゃ、解決しようにもできないじゃん」
「るさいな…人の気も知らないで…」
「なにそれ、もっとわからん」
彼女って言うくせに、恋人らしいことひとつもしてくんないじゃん。
そうやって言いたい。言ってやりたい。
けど、なんかそれ言ったら、やっぱり私の方ばっか好きみたいにならない?そう思って、言い留まる。
「じゃあそうだ。私が質問するから、はいかいいえで答えてよ」
「え?」
「だってるーりー、どうしても直接言いたくないんでしょ?」
そうやって、なんでも笑顔で見透かしてくるの、嫌い。
「…分かった」
「じゃあいくよ。まずは…私関係してる?」
最初っから核をついてくるの反則だと思う。
睨むように首を縦にふった。
「そっか…んーじゃあーなんか欲しいとか?」
一問目からどうしてそういうことになるのか、私にはいまいち理解しがたい。
欲しい、か…んー、欲してるには欲してるから、はい、かな。
「なるほど…ん、分かったかも!」
「え?ほんと?」
「うん。実際にあげるね」
「うぇ、出来るの?」
「もちろん。でも、もし当たってたらさ、ご褒美にるーりーもおんなじ事してね」
麗にとって、ご褒美になるもの…?
正直言って、全然分かんない。
考えてる内に、なぜか麗は私に「屈んで」と言ってさらに目を瞑らせた。
え、これって、…
「…正解だった?」
キスされるんじゃないか、と気づいた時にはもう私の唇に麗のものと思われる唇が触れていて。
目を開けると目の前にはニコッと首を傾げた彼女がいた。
初めて、麗から恋人っぽいことしてもらった。
キスのことで頭がいっぱいになりながら私は胸が高鳴るのを感じていた。
「るーりー、お返しは?」
なにそれ、まるで「正解なんでしょ?」と私を煽っているような言い方。
「め、め!目、つぶってよ…」
「えぇ〜顔見せてよ」
「い、いいから!」
ほんの一瞬、触れただけのキス。
手はずっと繋いでられるのに、唇はすぐに離してしまう。
でも、ほんとはもっとしたい。
これからもっと、もっと恋人っぽく…
end