短編小説U

□初めてをください
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今日、菅井ちゃんが泊まりにきてくれる。
付き合って三か月くらい経ったかな。私と菅井ちゃんが恋人になってから菅井ちゃんが寮に泊まりにくるのは三回目。菅井ちゃんの家には一回だけ行ったことあるけど、どうだったかっていうのは、まぁ、言う必要もないでしょ。



「…私の歳で、普通なのかよ…」


そして私は今、携帯をじっと見つめて検索中。なにを検索してるかっていうと、その、世の中の恋人ってどうなのかなって。
女の子同士って時点で普通と違うからあんま調べても意味ないかもしれない。


最初の頃はキスでさえも緊張して、恥ずかしくて上手くできなかった。だからそれだけで我慢できてたのに、最近はそうもいかない。
ただのフレンチキスで満足してたのに、もっとしたくなってディープな方も最近した。
これが引き金だったのかもしれない。「もっと触れたい。もっと欲しい。」って思ってしまって、思わず手が伸びそうになるんだ。


世の中の恋人は私の歳でエッチすることが普通ならしい。もっと言えば遅いとか。
結局はただの統計で意味がない。世の中の普通に囚われたくない。なんか愛佳みたいなことを思って携帯の電源を切った。そういえば愛佳のやつは、梨加ちゃんともうしたんだっけ?でもこの二人はちょっと早すぎだ。なんの参考にもならない。


頭の中に思考をぐるぐる巡らせて考えてるうちに、予定の時間がきてしまった。



身だしなみでも整えておこうかと鏡の方に向かおうとしたら、まさかのインターホンが鳴る。



…いや、さすがの菅井ちゃんもさすがにこんな早くはこないでしょ。
そう思いながら鏡に向かうのを諦め玄関に向かった。







「理佐ーきたよー」
「…そうだね。」
「え、なんか変だった?」
「いや、全然。」
「ふふっ、なんか理佐おかしいねー」
「…そうかも、ね。」




私の彼女は天然のくせにしっかり者だということを、エッチのことばっかりで忘れていた。
菅井ちゃんをとりあえず部屋の中に入れる。少しぼさぼさになった私の髪を撫でて「おかしいね」と微笑んだ彼女を軽く無視してもう一度鏡に向かう。うん、確かにぼさぼさだ。そう思ってささっと髪をとかした。


テレビをつけて適当に座る。いつもだったら私がソファに座って菅井ちゃんを足の間に招いてたんだけど、今日はそうもいかない。だって、今の私の思考回路でそんなことをしてしまったら耐えきれないじゃん。だから、したいけど我慢。



「…りさ。今日はそこだめなの?」
「え?」
「いつも呼んでくれるから…」
「っ、ん、っと。…おいで?」
「やったぁ〜」



はぁ…。やられてしまった。
大好きな恋人にそんな顔で「だめなの?」とか言われたら呼ぶしかないじゃん。結局いつも通りの位置につき、落ち着く。


いや、私の気持ちは全然落ち着いてないけどね。



そしてふと気づく。菅井ちゃんの今の恰好に。
菅井ちゃんのパジャマ、だよね。私の足の間に収まってるわけだけど、つまり後ろ姿が見えてて、多分お風呂上りでより艶やかな肌が、うなじが見える。


っ…!




「菅井ちゃん…」
「ん?」
「キスしたい。」
「ん…まだ許可してないのに。」
「だめだった?」
「ううん。いいよ。」
「じゃあもっとちょうだい。」
「んぅ、はっ…」
「ん…」



菅井ちゃんの肩に手をかけテレビから私に視線を移させる。菅井ちゃんは優しいからすぐこっちを向いてくれて、そのまま口づける。
最初は軽いやつだけだったけけどいつの間にか舌も入ってて。


なんかこの雰囲気、やばくない?
菅井ちゃんもなんかどんどんいやらしくなっててるし、私の気持ちも変になっててるし。






いいの、かな?
さっきまでは簡単に考えてたけどいざこの場面に直面すると、正直怖くなる。
キスは許してくれたけど、その先を菅井ちゃんはそれを望んでないかもしれない、私だけかもしれない、拒絶されるかも、しれない。



でも、これはこの先にも関わってくることだ。
どうせいつかはこうなるんだ。
なら、今でいい。





「菅井ちゃん。」
「り、さ…」
「お願い、あるんだけど。」
「なに?」
「あのさ…」



大丈夫だ、きっと。
そう心の中で言い聞かせる。
でも、口は開くのに言葉が喉の途中で止まってしまう。手も、震えてる。




そんな私を、菅井ちゃんは優しく包んでくれた。







「理佐。私はなにを言われても受け止めるよ?だから、そんな怖がらないで。」
「すがい、ちゃん…」
「言っていいんだよ?」







やっぱ、この人には敵わないや。







「菅井ちゃん、と…したいです。」
「うん。」
「触っても、いいかな?」
「いいよ。私の初めて、理佐にあげる。」




初めてなんて、プレッシャー大きいな。


始める合図のようにもう一度キスをして、菅井ちゃんの服を脱がせてあげる。恥ずかしそうにするその姿が可愛くて、ドキドキして、少し気が急ぐ。
でも菅井ちゃんが「ゆっくりして」って言うから意識して気を引き締める。


ブラも外して、そっとその肌に触れる。おへそのあたりから手を這わせて、キスもする。
触れたことのない新たな感覚が癖になりそう。手をどんどんあげていき、菅井ちゃんの胸に触れると今までになかった声を出した。その声に、溺れそうになる。




「感じてるの?」
「あっ、ん…わか、んない」
「どう?」
「んぅ!」
「あ、痛かった?」
「だ、いじょうぶ。」



親指と人差し指できゅっとつまんであげると痛そうにしたから焦る。菅井ちゃんは大丈夫って言うけど私だって初めてだからよく分かんなくて心配になる。心配しながらも先に進みたいという欲求が勝り、とうとう下のズボンも脱がして、下着だけを着てるだけの姿になった。頬を真っ赤に染めて顔を隠す彼女にまたキスをして、菅井ちゃんのそこに、初めて触れる。


指で押してあげると出るくちゅっていう音と、指先から伝わる水感からこれが濡れてるってことなんだって知る。つまり菅井ちゃんは感じてくれてるってことで、また嬉しくなる。
それだけじゃもう我慢できなくて、それも脱がして、菅井ちゃんをもうなにも身にまとってない素の姿にする。





「入れるよ。」
「んぅ…!」
「どう、かな?きもいい?」
「まだ、分かんない、かも…」
「痛くない?」
「う、ん。痛くはないよ。理佐が、優しくしてくれてるから。」
「っ、嬉しい。」




きっと初めてだからよく分かんないんだろうな。そう思いながらも、するからにはやっぱり気持ちよくさせてあげたい。
菅井ちゃんの中をゆっくりかき混ぜてあげる。くぐもった声をあげる菅井ちゃんが何を思ってるかなんて分かんないけど、私もうまく気が回らない。

あるところで、菅井ちゃんが今までと違った声を出した。「痛かった?」って聞いたら「違う。」って答えたから、あ、ここがいいとこなんだなって分かった。




「あ、んぅ!そ、こ…だめぇ…」
「ここ?」
「ん!」
「ゆうか、可愛い。」
「り、さぁ…」



菅井ちゃんにキスして、見つめあう。



「好き。全部好き。」
「わた、しも…」
「愛してるよ。ゆうか。」
「あ、んぅ…!!」




抱き着いたら、菅井ちゃんの体が大きく反った。
耳元から荒い呼吸音が聴こえてくる。体を離して、お互いの顔を見てすっごい疲れたねって笑いあった。


初めての行為。菅井ちゃんが部屋に来る前まで調べてた自分がなんかおかしい。
なんていうか、初めてしてみて分かったんだけど、勝手に体動くんだなって思った。なんか、流れる感じで。
いや、余裕がないだけか。



「菅井ちゃん初めてだったんだね。」
「うん、そうだね。」
「…どうだった?」
「理佐えっち。」
「え、いや!そういう意味じゃ…」
「そうだな…う〜ん。きもちかった、かも?」
「かもって…まぁ、いっか。」
「理佐は?」
「すっごい、きもちかった。」
「やっぱ、えっちだなぁ。」




恥ずかしくて菅井ちゃんの頭をくしゃくしゃして二人でベッドに倒れこんだ。向かい合って、また笑いあって、「友香」って呼ぶと、「理佐」って返してくれて。手にキスすると、私の手にもキスしてくれて。「おやすみ」っておでこにキスしたら、また返してくれて。





「好き」って言ったら、「好き」って言ってくれて、二人で一緒に目を閉じた。















END.

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