ずっと君といたかった

□最終話
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平手side


「はぁ…はぁ…」

部活帰り。私はこれでもかというぐらいに全力でペダルをこいでいた。ねるに早く会いたいから。
一昨日。ねると一緒に花火を見て私が告白した日。花火大会がもう少しで終わるって時にふとねるをみたら涙がこぼれていた。「なんで泣いてるの?」って聞いても「てち、てち」って私の名前しか呼ばないから、とりあえずなだめてあげようとねるの言葉をしっかり聞いてあげた。最後まで聞いても泣いている理由は見つけられなかったけど、私のことが好きっていう気持ちがすごい伝わってきて、それと同時に何か大事なことを私は見落としてるんじゃないかなって思った。

「ねるに、会わなきゃ…!!」

あのときはねるに「愛してる」なんて言われたから嬉しくなって笑顔で帰ったけど、本当に帰ってよかったのか、わからないんだ。
でもきっと、ねるに会えばわかるはずだ。本当は昨日会いたかったんだけど部活の先生に見つかって会いにいけなかった。だからその分の思いものせて、私はねるがいる病室のドアを開けた。

「ねるー!……?」

『てち、来てくれてありがと。』
でもいつものねるの声は聞こえてこなかった。
寝てるのかなって思ってカーテンを開ける。

「………ね、る?」

そこには、大好きな人の姿もなくて。
私がいつもベッドに座ってたからできてしまった跡も、ねるがいつも寝てるからついていた跡もない、真っ白できれいになったベッドがそこにあった。
そして、一通の手紙と、白い花と赤いチューリップが一本ずつ丁寧にベッドの上に置かれていた。

「てちへ…ねる、より…」

静かに手紙を手にとって見るとそこにはそう書かれていて、中のものも取って、私は手紙を読んだ。

『てちへ。
 
 
花火大会、ありがとう。すっごく楽しかった。あんなに花火がきれいに見えたの久しぶりだったよ。本当に、ありがとね。
 あと告白の件だけど、てちってすっごいストレートだよね、私もずっと好きだったから嬉しかったよ。あ、調子にのっちゃだめだよ?てちっていっつも調子にのるから…かっこいいときもあるのに、台無し。

 多分、私のベッドはもうきれいになっちゃてるのかな?てちごめんね、いきなり。ちょっと色々あってさ。好きって、告白されたばっかりなのにね。だめだよね、こんな年上…

 だから、てちにはもっといい人いっぱいいると思うよ?私なんてもったいないし、これから、てちはいろんな人と会えると思うし…

 きっと、もう私はてちに会えないと思うから、最後に、これだけは言わせてね。


大好き。私のこと、見つけてくれてありがとう。

               
               ねるより。』


君は、一体どこに行ったのか。
私には、君しか見えていないのに。
こんな手紙を置かれたって、私がねるを諦められるわけない。それどころか、好きになっていくだけなのに。
「いい人がいっぱいいる」?私にはねるしかいない。「最後に」?ふざけないでよ、最後の言葉なんて聞きたくない。

頭が混乱する。そんな中で、私は手紙と一緒に置かれていた花を見た。

”赤いチューリップ…花言葉・好き”
”かすみ草…花言葉・ありがとう”

いらないよ、こんなのいらない…
私はねるの声が聴きたい。ねるの顔が見たい。ねるを抱きしめたい。もう一度、キスをしたい。

「ねる…ねるっ、ねる、ねる…」

何度呼んだって、君のいないベッドを抱きしめたって、返事は返ってこない。どこからともなく流れてくる涙が、きれいになったベッドを濡らしていく。



「ねるの、お、願い、聞いてあげたじゃん…
 私の一番のお願い、叶えてよ…」





『ずっと君と、ずっとそばに、ずっと一緒にいたかった。』
これが、私の一番の願い。
もう、かなえられない願い。









                   end.


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