短編小説

□vsねこ
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今日は珍しくオフの日だった。

最近は欅の仕事が忙しくなかなかちゃんと休める機会がなかったのでありがたい。
アイドルになる前は休みなんてただ暇をつぶすだけの日だったから、初めてこんなに休みの日に感謝したかもしれない。

「ねぇねぇあかねん!次どこ行くの?」
「んー。友香の好きなところでいいよ?」
「ほんと!?じゃあコンビニ行きたい!なんかね、新作のスイーツでたんだって、だからあかねんと食べたかったの!」

あぁーもう、その笑顔反則だよ…

コンビニなんてわざわざ休みの日じゃなくても行けるよって思ったけど、友香があんまりにもキラキラした顔で言うもんだからついつい了承してしまう。

こうやって大好きな恋人と遊べてるのも、欅に入って、休みがとれたからからだ。

欅に入れてくれてありがとう、神様…て、心底思う。
うん、本当に。

今日も幸せだな〜、なんたって友香の可愛いお願い聞けたし、友香が可愛くコンビニの新作スイーツ食べてるのみれたし、ついでにあーんってしてもらったし。まじであーんの時は心臓爆発するかとも思ったけど。

しかも今日は、寮に泊まってくれるらしい。いやほんと、最高だな。


そう思いながらふと友香がいた隣をちらっと見てみる。

…うん?なんで友香が見えないの。
あ、反対かと反対を見てみるけど、友香は見えない。

うそでしょ…。さっきまでの最高の気分はどこかへ吹っ飛び、焦りを隠せない。

「っ友香!……ってもう、焦らせないでよ…」

遠くまで離れちゃったのかと思ったら、意外と近いちょっと後ろのほうに見える路地裏で、友香はしゃがみこんで、何かをみつめていた。

「…友香?なにしてんの、心配させないでよ。」
「あ、あかねん…」

友香が涙目で目線をこちらに向けてくる。ついでに、友香の家でよくきく「にゃー」という鳴き声も聞こえてきた。


なんか、まずい気がしてきた。


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「わぁ〜可愛いね、君は捨てられたの?」
「にゃ〜〜」
「かわい〜!!やっぱり猫は癒されるな…最近トム冷たいんだよね。」

結局、可愛い恋人の今日2つ目のお願いを断れるはずもなく、今に至っている。

ほんと、寮母さんにみつかったら私が怒られるんだからね。

「ゆうかー、明日には返すんだからね。」
「わかってるよー」

ほんとにわかってるんだか…

「ゆうかーお風呂どうする?」
「うーん、先いいよー」



「ゆうか、夜ご飯どうする?」
「んーなんでもいいー」
「もうできてるけど?」
「待ってーもうちょっとこの子に触ってからー」

………いやいやいや、こっちがちょっと待ってだよ?

おかしくない?さっきから私が聞いてんのにさなんでそいつ(猫)にむかって返事してるわけ?しかもそんな可愛い顔でさ。ここ、一応恋人の部屋なんですけど。

…やばっ、考えたらイライラしてきた。そう思ってたら友香が「お手洗い行ってくる」と部屋からでていった。
すぐさま猫を持ち上げ説教する。

「おいお前、なに人の彼女とってるわけ?」
「にゃ〜」
「そうやってさっきから友香を返さないで…わかってる?今日は久しぶりの休みで久しぶりのデートだよ!お前のせいで最後のお家デートが最悪だよ…」

ねこにあたっても仕方ないのはわかってるけどさ…
やばっ、ねこ苦しそうにしてる。急いで解放してあげた。

で、わかった。悪いのはねこじゃない。
友香は私の恋人。なんのために私の部屋にいるかなんて、分かりきったことでしょ。

じゃあ私がやるべきことはひとつで、単純なことだ。

「ただいま〜ねこ〜だいじょんんっ!?」
「っは、おかえり、ゆうか。」

手始めに、満面の笑みで友香にキスして地面に押し倒した。

「んんっ!ちょ、と、あかね、ん!」
「どうしたの?恋人の部屋なんだから当たり前でしょ?」
「で、も…急過ぎっ!」
「だってさ、”恋人の私”がねこに負けるなんて、だめじゃない?」

だから、今からねこなんて忘れるぐらい私に夢中にさせてあげるよ、ゆうか。

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