短編小説

□二人の幼馴染み
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「べりー迎えに来たぞー」
「ん、今行く…」
「べりーまだかー」
「今…」
「べりー!」

私的には声を出したつもりだったけどまなかには聞こえないらしい。だから声を出すことを諦めて急いで玄関に向かう。

「なんだ、起きてんじゃん」
「まなかうるさい…」
「遅刻するぞー。早く行こう」
「うん。」

遅刻はしないと思うんだけど。まなかが家に迎えに来るのは小学校からの習慣で、必ず来てくれるから遅刻をすることなんてなかった。
まなかは私の幼馴染み。ずっと昔から仲が良くて家族ぐるみでもそんな感じ。
まなかのお母さん、すっごい優しいんだ。私すごい好き。


二人で学校に向かう。
そしたら地元の川が下に通るちょっと小さい橋が見えてくる。橋と一緒に、もう一人の幼馴染みも。

「おはよう、梨加ちゃん」
「おはようりさちゃん。」

優しく微笑んであいさつしてくれたりさちゃん。この子がもう一人の幼馴染みで、りさちゃんがここで待ってるのもまなか家に迎えに来始めたのと同時の始まったこと。
りさちゃんと私とまなかは幼馴染みで、昔からずっと一緒だった。
高校生になった今もこうやって、小学校からの習慣をまもっている。

「え、なんでいんの?」
「梨加ちゃんに会うため。」
「私もいるんだけど」
「ちょっと早くして二人きりで行こうとした奴にあいさつする意味ないでしょ。」
「ち、ばれてたか…」
「ばーか」
「このやろぉ…」

実は、二人が話してるとこ見てるとちょっと羨ましくなる。二人には私とは違う距離感がある気がするから。

仲、いいな…

「あ、ごめん梨加ちゃん!こんな奴とばっか話しちゃって…」
「べりが一番だしっ!」
「え、別になにもいってない…」

なんで焦ってるんだろ…?
ちょっと黙っていたら二人が焦り始めた。そうやってあーだこーだ騒いでたら、もう学校に着いていた。
靴を脱いで、教室に向かうまでもずっと二人と一緒。だって一緒のクラスだからね。黒板をみたら今日日直みたいで、りさちゃんとやんなきゃだめみたいだった。

「梨加ちゃん、今日頑張ろうね」
「うん…」

ニコって言ってくれる。隣でまなかが怒ってるみたいだけどもう少しでホームルーム始まるから座らせてあげた。

さっきちょっとキュンとした。りさちゃんってあんまり笑顔にならないから、あんな顔を急にされるとちょっと困っちゃうな。

その後も、休み時間、移動教室、お昼休み……ずーと一緒。これが毎日の日常なんだから、笑っちゃうな。


放課後。日直の仕事をするためにりさちゃんと二人で教室に残る。まなかは「変なことすんなよ」って言い捨てて部活に行った。なんのことだろ、そんなに私変なことしないんだけどな…

「梨加ちゃん生活の記録書いた?」
「あ、まだ。ごめん…」
「大丈夫だよ。時間あるし」
「でも、りさちゃん帰れる時間だし…」
「そんな悲しい顔しないの。」

そう言って頭を撫でてくれる。りさちゃんは私が悲しい顔するといっつもこうやってしてくれる。昔からかわんないんだ、優しいこの撫で方。私の、好きな撫で方。
でも、しいて言えば…

「私、梨加ちゃんのこと好きだから。」

これかな?かわったこと。
最近二人きりになるといっつも「好き」って言ってくる。もちろん私も好きだから「ありがと」って言うんだけど、りさちゃんは「そうなるよね」って苦笑いだけする。
わかんないな…。

やっとのことで仕事を終わらせた後、保健の先生に用があるのを思い出して、りさちゃんに「ちょっと行ってくる」って言って保健室に向かった。

ガラガラー

「え、べり?」
「まなか?…け、けがしたの?」
「あ、うん。ちょっとね。」

保健室に入ると、目的の人はいなかったけど膝におっきい絆創膏を貼ったまなかがいた。聞けば部活で転んだとか。部活の絆創膏が切れてたとか。先生は急にいなくなったって。
とりあえず疲れたから、まなかの横に座る。

「ん…」
「え、べり?」

休もうとして、いつもみたいにまなかに寄りかかった。でもけがしてるんだったって思ってすぐ戻る。

「ぷっ、あははっ、なにやってんの?うける。」
「なんでもない…」
「可愛いな〜このやろっ」
「んー、髪ぐちゃぐちゃになる…」

そうするとまなかは笑って私の頭を撫でる、のとはちょっと違うけど、乱暴にぐしゃぐしゃしてくる。りさちゃんと違って優しくはないけど、まなかのはちょっと違う心地よさがあるんだ。これも、好き。
でもまなかもいいだけ撫でた後に、真剣な顔をして、顔を寄せて

「好きだよ、べり」

って言った。そしたらすぐ先生が来たから特になにもなかったけど。
まなかもりさちゃんとおんなじで、二人きりなると最近、いつもそう言う。


二人とも、変だな。そう感じても結局、この日常は変わんなくて、毎日毎日繰り返される。




だって気付くわけない。二人の幼馴染みが、私のこと、本気で好きになるなんて。
そんなの、信じられないよ。

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