短編小説(その他)

□初デートはお家で
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「こばってある意味玉の輿だよね。」
「たしかに〜」
「あれだよね、会社の社長と結婚するレベルだね。」
「あのさ」
「?」
「勝手に変な話しないでよ…」
「変な話って、」


ほんとのことじゃん。


たしかにあながち間違いじゃない。
私は尊敬する乃木坂さん、しかもセンター経験者であり福神常連組のあの大人気な西野七瀬さんとお付き合いすることになったんだから。
正直今でも嘘だと思ってる。
本当だなんて信じられないし…でも、私の携帯には西野さんのケー番も入ってて、付き合うようになってからはラインも交換した。
西野さんはよく私にラインをくれる。内容はもっぱら、


「好きやで?」
「…」
「って西野さんから直接ラインくるとか由依羨ましすぎる〜!」


いや、西野さんはこんな織田みたいなボイスじゃない。もっと可愛くて控えめで…
ってなに考えてるんだ。今はそんなことよりも大事なことがあるでしょ。


「だから、デートはどこに行けばいいの!」
「そんなおこんなって。」
「由依。落ち着いて。」
「ぽん観察にのせちゃうよ。」
「こいつら…」


理佐以外め。今度仕返ししてやる。
そう心に誓いながら、とりあえず頼れるのはこいつらしかいないからぐっと我慢する。



事の発端はつい先日。
西野さんから連絡があって、今度久しぶりに休みがもらえたからデートに行きたい、というものだった。
付き合ったのはいいものの、姉妹グループだからといっても仕事が合うことはほとんどないし、西野さんはとてつもなく多忙で、告白の件以来はまともに顔を合わせたことはなかった。

西野さんはデートの約束とともに、私にお願いをしてきた。


どこに行くかとかは、由依が決めて、と。


それを了承したのはいいんだけど、三日一人で考えてもいい案が出ないから、この三人に手伝ってもらってる。



「でも西野さんって忙しいからさ、やっぱ温泉とかそういうくつろげる系の方がいいんじゃない?」
「あぁ…なるほど。」
「だめだめ。こばが七瀬さんのこと襲っちゃうって。」
「しねーよ…」
「由依はそんな勇気もってないっしょ。」
「理佐に言われたくないし…」
「ん〜うちはやっぱ遊園地とか、ザ・デート!って感じのとこの方がいいと思うけど。」
「まぁたしかに…初デートだしね。」
「私は買い物かな。二人とも好きそうじゃん。」
「会話できる自信がない…」
「恋人なんだし、そんなの勝手に繋がるって。」
「そうかな…」


不安しかないよ…


「でもやっぱさ、あそこが一番じゃない?」
「「「あそこ?」」」
「うん。落ち着くし、ちょうどいいじゃん。」
「…どこだよ…」



なんだろう。


とてつもなく、嫌な予感がする。








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