短編小説(その他)

□憧れの人
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私からは絶対に近づくことが出来ない彼女が、まさか彼女自身から手を伸ばしてくれるとは思わなかった。周りのメンバーやスタッフさんも驚きを隠せない様子で、まあもちろん、私が一番驚いていたわけだけど。
特に何をした訳でもない。彼女もそう言っていた。端っこにいる私に目を付け、可愛いなと思ったと。ただそれだけ。こういうのってやっぱ、偉大な人だからこそなのだろうか。それとも、松井玲奈さんだからなのだろうか。


あの時から、玲奈さんは間違いなく私が目指すべき目標の人として心の中に留まることになったはずだ。
そんな矢先に私は移籍が発表され、まさかの、玲奈さんと同じグループの同じチームで。でも、嫌な気持ちと嬉しい気持ちがごちゃ混ぜになって大変だった。そんな時、やっぱり救ってくれたのは玲奈さんで…


大好きな、憧れの先輩
本当は、交わることもないはずだったのに
その人は、私を見つけてくれた
そして運命は、より近くに私を導いてくれた


尊敬の眼差しは、いつからか熱を帯び
圧巻のパフォーマンスを見る時の高鳴る胸は、いつからか興奮以外の何かが混ざり
彼女と話す時の嬉しさには、いつからか焦りを覚えた。


私は、すごく欲張りなんだな。
手が届いただけでも奇跡だっていうのに、その先へ進みたいだなんて。
伸ばしたその手を、掴んでほしいだなんて。




「たに!」
「なんですかあー?」
「好き!」
「谷も、大好きでぇーす!!」



あなたの好きに、私は同じ好きでは返せない。



「今度遊びに行こ?」




でも、私の好きは届かなくていい、なんて思ってる




「えっ、ほんとですか!?行きます行きます!!」





玲奈さんのちょっと特別な好きを頂いてるから



その眩しい笑顔を、見ていたいから。








end



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